内容説明
「ボッコちゃん」「マイ国家」など数多のショートショートを生み出し、今なお愛される星新一。森鴎外の血縁にあたり、大企業の御曹司として生まれた少年はいかなる人生を歩んだのか。星製薬社長となった空白の六年間と封印された負の遺産、昭和の借金王と呼ばれた父との関係、作家の片鱗をみせた青年時代、後の盟友たちとの出会い――知られざる小説家以前の姿を浮かび上がらせる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小梅
98
星新一の生い立ちはザックリと知ってはいたが、父の星一の人物像も詳しく書いてある。高校生の頃、品川区平塚にあった星新一宅に行った事もあったし、数年前には星薬科大学に行って星一の銅像や資料館も見せてもらった事があるので、星一についてもだいぶ知ってはいたが、改めてパワフルな人だったんだなぁと思った。上巻は日本にやっとSFと言う言葉が生まれた頃まで。さて下巻に突入します。2018/10/08
Tetchy
93
まず衝撃的だったのがいきなり序章で星新一の臨終までの顛末が書かれる事である。1001編ものショートショートを書き上げた後、筆を折ってから、魂が抜け落ちたかのように急激に老衰する星氏の様子が実に痛々しい。しかしその後はまず星氏の父一の伝記が始まる。星氏が父の死で案に反して副社長に祭り上げられ、食い物にされていく様はなんとも痛々しいが、その後矢野徹氏が登場するに至って俄然面白さを増してくる。星“親一”が星新一になり彼が文壇に現れたことが「事件」であったことが検証されていく。この日本SFの黎明期が実に面白い。2016/08/01
kokada_jnet
90
傑作評伝。最相さんには、本人はご希望されないかもしれないが、小松左京の伝記もぜひとも、お願いしたいところ。どうも、このままだと書いてくれる方が現れないようなので。しかし、この本の刊行時に「私自身は星新一という作家をあまり評価していないので、こんなに大部な評伝が書かれるほど文学史的な位置のある作家なのかという疑問をもった」とカマシタ、川村湊はいい根性している。『異端の匣―ミステリー・ホラー・ファンタジー論集』という本まで書いているのに。ジャンル作家の中でも、星新一は子供向け作家と思っていたわけね。2022/11/03
yamatoshiuruhashi
66
昭和40年代末期に高校生だった私は、その頃出版されていた星新一のショートショートの文庫本を全部揃えたことがあった。手塚治虫のW3(ワンダースリー)の主人公や兎に化けた宇宙人の名前が先に頭に入っていて、高校入学早々に友人からそれらは星新一という作家から取られていると聞いて初めてその作品を手に取った。私は星新一を契機に小松左京や筒井康隆を読むことになるのだが、その星新一自身については通り一遍のことしか知らなかった。少年時代から客観的に星新一を語る本書で再び星新一への興味が湧き起こってきた。興味津々で下巻へ。2022/11/20
KAZOO
51
2年前に、上だけを読んで下巻を読んでいなかったので上巻の初めから再読です。星さん自体はいろいろご自分のことや家族先祖のことを何冊かに書かれていますが、第三者のしかもノンフィクションを書かれてはかなりの手練れである最相さんが書かれるとなると期待が持てます。父親や少年時代のことなどさらにはどのような本を読んでいたかなど興味が尽きません。2014/10/25