内容説明
60の齢に達し、病床の身にあった桓武帝は安殿に譲位した。平城帝が誕生し、ひとつの時代が終わりを告げた。桓武から平城、そして嵯峨へ……。権力と愛欲の葛藤が繰り返され、平和はやってくるのか? 野望と挫折、長編歴史大河小説の名作。解説・末國善己。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がらくたどん
51
世は大王桓武から父を超えたいガムシャラ平城帝へと世代を移し本拠地も長岡だ京都だいやいやまたしても奈良か?と畿内をフラフラ、天皇も都も彷徨う平安の初期。長い部屋住みを終え官僚として政治の面白さに目覚めた冬嗣は仕える先を政務の中心に居る父さえも「目はないぞ」と評する平城帝の弟賀美能に決める。天性のお人好しで関心は歌舞音曲と綺麗なオネエサンのみ。このシンボルの神髄みたいな皇子と「他人の輝きの照りかえしで金色に輝いても意味がない」が身上の天才能吏の化学結合が「強き王」が牽引してきた律令国家を想わぬ形に変えていく。2024/10/16
NORI
24
永井路子・平安王朝三部作の一。下巻。 誰を担ぎ上げるのか。担ぎ上げた方がどれだけの権勢を振るうのか。藤原の南家・式家に主導権を握られていた当時、冬嗣が、時の運も味方にして紙一重の権力闘争を勝ち抜く。 平安時代の出世頭の花形"蔵人頭"成立の物語など興味深いエピソードを交えながら、これがやがて道長へと通じる藤原氏北家時代の幕開けの序曲だと思うと胸熱。 クライマックスでもある嵯峨vs平城(いわゆる薬子の変)が思いの外あっさり片付いてしまったのが若干残念だが、濃厚なストーリーを丁寧な人物描写と併せて楽しめた。2025/01/03
本のロマンス
16
桓武・平城帝以前の、ライバルを誅殺して権力を掌握する、そんな強権独裁から決別し、文治主義なる平安朝の基礎を築く・・かかる嵯峨天皇と藤原冬嗣の功績が描かれ、興味深くかつ共感大でした。そんな中、人間と社会の本質に迫る台詞が多出し、作品に深みも感じました。例えば、✰真剣な苦悩のないところに、真の宗教的な探究は生れない。✰温裕、弘雅は、その下に、白刃以上のすさまじさを秘める。✰事件というものは人の心を裸にする。✰どんなことでも、その気になれば人を陥れる道具にはなる。✰死に臨んだ人間にはある凄さのようなものがある。2024/11/27
ゆずきゃらめる*平安時代とお花♪
15
上巻から続いてやっと冬嗣の役割が。もともと賀美能〈嵯峨〉について良かったな。御殿〈平城〉はだめだな。薬子を離したはずなのに太上天皇だからって口をだしすぎたな。本当に二人は愛だったのだろうか。〈薬子の変〉で真夏が動いたらちがったのうだろうか。蔵人頭で官職のイメージが変わったな。2024/12/24
coldsurgeon
9
桓武平城嵯峨天皇の三代にわたり、下級官吏から最高位の官僚に上り詰め、その後の藤原氏の栄華の基礎を気づいた藤原冬嗣の一代記。政策を自ら考案実行へと行動した桓武平城の2代と嵯峨天皇の政治姿勢が、対極にあり面白い。権威と権力が分割されながらも密着していく政治形態は、この時代に生まれ、冬嗣が生み出していく。冬嗣は、嵯峨天皇を実質的な政治から遊離させ、令外官としての蔵人所を創設し、律令社会を換骨奪胎しながら、国家の経済的基盤の改革を進めた。その後の平安朝は、独裁的な王権ではなく、貴族らの能吏たちの時代だった。2024/10/07
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