内容説明
アスレは不毛な海岸地帯の街をさまよっていた。妊娠中のアリーダを連れ、住居と仕事を探していたのだ。だが、お互いだけが家族の17歳を助けてくれる者はいない。決死の思いの選択は、やがて家族の生に影を落とす。ノルウェーのノーベル賞作家による連作短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
143
2023年のノーベル文学賞作家、ノルウェイ人のヨン・フォッセの代表作ということで読みました。 三部作というよりも、アスレとアリーダという恋人たちの半生を描いた3つの連作短篇集、散文と小説が融合した物悲しい文章ですが、これがノーベル文学賞?という感じでした。 これならば、何時、村上春樹が受賞してもおかしくありません。 https://www.hayakawabooks.com/n/nb657129cea7f2024/10/24
遥かなる想い
81
ノルウェーの作家による短編集である。 ビョルグヴィンという町を舞台に 恋人たちの人生を描く。台詞と散文が繰り返され、 全編に雨が降り、閉塞感が漂う。 アスレと アリーダの二人はどうなっていくのか?そして その子供たちは? 幻想とリアルが混在し、不可思議な世界だが、 ひどく北欧の雰囲気満載の短編集だった。2024/12/04
chimako
66
ヨン・フォッセがノーベル文学賞受賞者だとは知らず、図書館の新着図書コーナーの印象的な表紙に惹かれ読んでみる。暗くて長いお芝居を観たような感覚。台詞もト書きも登場人物の心情も全てが句点なしに書かれ、深みに填まり身動きのとれない主人公と共に冷たい雨と空腹に耐えた。そうしなければ生きて行けない現実は、やがて彼らを更なる深みへと引きずり込む。17歳の若い二人に子どもが生まれるまで、子どもが生まれてからアスレがいなくなるまで、アリーダのその後と子どもたちの事。きっと幸せもあっただろうに、温もりのない終わり。2024/11/18
ヘラジカ
34
先に邦訳が刊行された戯曲『だれか、来る』よりも遥かに掴みどころのある散文作品。筋書きはシンプルな苦難のラブストーリーと言えるし、三部構成なためにリズミカルで、全体も見通せて読みやすい。しかし、それだけに余白や背景を読み解こうと思うと凄まじいエネルギーがいる。舞台の土壌と歴史、宗教的(聖書的)視点、文体に反して生臭さすらある人間(欲望)描写…。一筋縄ではいかない現代の寓話である。浅い読みでは太刀打ち出来たとは思えないが、終幕の美しさには文字通り息を吞んでしまった。もっと詳しい解説を読みたいところである。2024/09/05
練りようかん
20
父が海で亡くなり住処を失った若い男女。一目で妊娠中とわかる外見がネックになり、誰も二人を泊まらせてくれない。安心して眠れる場所がないこと、自己責任論、酷な展開は氷柱が落ちるイメージを抱く。不眠と犯罪の強い因果関係を感じる一編目はサスペンス、名前を変え別の地で暮らすも過去が追いかけてくる二編目は罪悪感の迷宮、二人が亡くなった未来の三編目は曖昧にされた罪と死を時も視点も自在に飛んで綾なす、奪われる連鎖が著者紹介やあとがきで書かれていた通り、散文×戯曲による独特の気配をともなって描かれていて、世界観が濃かった。2025/07/13
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