内容説明
1800年代後半、のちに『吸血鬼ドラキュラ』を生み出すことになる若きブラム・ストーカーは、人気俳優であり劇場経営者でもあったヘンリー・アーヴィングに雇われ、ライシアム劇場の支配人となっていた。仕事に忙殺される慌ただしい毎日だったが、ストーカーの無意識の中で『吸血鬼ドラキュラ』の小説が形をなしていくにつれ、ドラキュラの存在が影絵の芝居(シャドウプレイ)のように現実に影を落とし始める。劇場では、ジョナサン・ハーカーという名前の男が働き、屋根裏にはミナという名の幽霊が出る……。アイリッシュ・ブックアワード受賞。ストーカー、アーヴィング、そして一座に加わった名優エレン・テリー。個性的な三人の人生を、虚実織り交ぜたドラマティックな筆致で描く『吸血鬼ドラキュラ』誕生秘話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
116
創元推理文庫版『ドラキュラ』の解説にある作品が書かれた経緯を小説化している。ブラム・ストーカーが傲慢な天才俳優アーヴィングに振り回されながら、様々な経験を重ねて名作を発表するまでを虚実取り混ぜたドラマに仕立てた。世紀末ロンドンやダブリンの演劇界や切り裂きジャックの跳梁、ストーカーの私生活などは確かに面白いが、そちらが主となって吸血鬼物語誕生プロセスはほとんど描かれない。特にアミニウス・ヴァンベリとの出会いや執筆中の状況など最も関心のあった部分は全く触れられず、題名通り意味不明な影絵芝居を見せられた気分だ。2024/06/07
セロリ
36
ダブリンで役所勤めをしていたブラム・ストーカーが当代一の名優ヘンリー・アーヴィングに誘われロンドンへ移住、劇場支配人として奮闘する物語。立ち上げたライシアム劇場に当代一の女優エレン・テリーも加わり、アーヴィングとの絆だけでなく、エレンへの恋心も伝わってくる。ストーカーが、アーヴィングをモデルとし『ドラキュラ』を書き上げるときの妄想状態が秀逸。現実の境目が曖昧で、わたしには線引きが難しいのだけど、それはそれでいいと思えた。そして第三幕、終章。これがとても切なくて、うるうるでした。2024/09/20
星落秋風五丈原
31
作家よりも作品が有名になった人と、その逆がいる。前者がブラム・ストーカーで、後者がオスカー・ワイルドだ。ブラム・ストーカーがアイルランド人であることは、あまり知られていない。また、彼があの名作を生み出す前、人気俳優で劇場経営者のヘンリー・アーヴィングに雇われていたことも知られていない。ストーカーは、殆どの人に、あの作品で知られているのだ。ちょうどその頃、同じアイルランド人として、ヒット作を連発し、売れっ子作家の名を欲しいままにしていたのがオスカー・ワイルドだ。しかしやがてある裁判により転落の一途を辿る。 2024/05/30
おだまん
12
表紙に惹かれて。ブラム・ストーカー、アイルランド文学だったのですね。この世界に入るのに少し時間がかかってしまったのですが、当時の劇場や町の雰囲気がよかったです。これを踏まえて原作もちゃんと読みたい。。2024/09/08
rinakko
11
素晴らしかった。舞台はヴィクトリア朝ロンドン。ブラム・ストーカーが『吸血鬼ドラキュラ』の執筆に至る経緯が、当代一の二人の名優との何とも名付けがたい交わり(深い愛も狂おしい嫉妬も憧れも)を軸に語られる。作中には『ドラキュラ』からの引用や目くばせ、仄めかし、名優アーヴィングが得意としたシェイクスピア劇のセリフの引用やもじりなど惜しみなく鏤められている。繊細で人に優しく夢見がちだったストーカーが、その想像世界の中では邪悪な流血の物語を生み出していた…ということ、その、誰にも見せない昏い顔を持つ人物造形に感嘆した2024/07/01




