内容説明
その姿を見た者は、生涯魂を囚われる――。
海と鯨に心を奪われ、人生を狂わされた男たちが、神の生き物に挑む!
土佐の中浜村で漁師の次男として生まれ育った万次郎は、鯨漁に魅せられる。やがて仲間たちと漁に出た際、足摺岬の沖合で遭難してしまう。漂流した五人は無人島にたどり着くものの万次郎は銛打ちの師匠・半九郎の形見の銛を追って、さらに漂流してしまった。単身、大海原に投げ出された万次郎を救出したのは、米国の捕鯨船ピークオッド号だった。その船長・エイハブは、自分の片足を喰いちぎった巨大な白いマッコウクジラ“モービィ・ディック”への復讐に異常な執念を燃やし、乗り組員となった万次郎を巻き込んでゆく……。
ジョン万次郎と、ハーマン・メルヴィルによるアメリカ文学の金字塔『Moby-Dick』が、夢枕獏の奔放な想像力によって融合する!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けいご
28
いや〜むちゃくちゃ面白かった!久々興奮したねw上巻で万次郎しか救助されなかったのは伏線だったのねw様々な伏線もちゃんと回収されていて、且つ本家の「白鯨」で語られなかった隙間を巧みに活用する事でエイハブもピークォド号の乗組員も生き生きと描かれていました★最終話を読み終わった後、「白鯨の時間軸」と「メルヴィルの時間軸」と「史実の時間軸」が合わさるのだけれど、鳥肌ものでしたwあの手紙が勝海舟に届いていたらこの物語は現実になっていたのにな〜wモーヴィ・ディックが空想から現実に飛び出てくる1冊でした★2024/06/22
Nao Funasoko
21
メルヴィル『白鯨』とジョン万次郎のコラボレーションによる大スペクタル海洋冒険小説。 全体の構成の巧みさはもちろんのこと、釣り好きな著者故に釣りや海の潮の流れといったあたりの細かな表現もリアリティがあり、その情景が目に浮かぶようだった。 読み進める中でイシュメールの「捕鯨船というのは、ひとつの壮大な物語のようなもの」という語りがあり、それが妙に印象的だったので読み終えてニヤリとした。 エンターテインメント性にも溢れ令和の時代の「子ども文学全集」に加えたい一冊。2024/06/04
カマンベールねこ
11
いやぁおもしろかった!素晴らしかった!陰陽師の作者と同じ人とは思えない!いや陰陽師シリーズ好きよ?けどあれはざる蕎麦みたいな本やん?こっちは濃厚豚骨味噌ラーメンみたいな本だった!最後は現実と辻褄をあわせる力業っぷりも凄かった(笑)今年の個人的ベスト本かもしれぬな。2024/08/18
hasami1025
8
物語が見事にくっつきました!!!こういうの、楽しいですね☺いつかどこかで、こういう創作が流行るかもしれません。2024/05/03
キュー
4
時代物が苦手で原典の白鯨を読んだ事が無いので戸惑う部分も多かったんだけどやっぱりラストの方の熱く盛り上がる箇所は先生、ここがすごい書きたかったんだろうな〜と思いながら読んだ。 万次郎の眼から、熱い涙が、火のように噴きこぼれた。 ここの箇所が夢枕獏らしくて、そして昭和の熱血漫画の様な熱さで読んでいて盛り上がったな。 山岳小説と同じ様に白鯨も自然の厳しさとして表されていて、ああいう決着になるのも、まぁそうなるかと納得した。 面白かったんだけど、物語には結末なんていらないんじゃないかと思うって所には苦笑。2024/06/02