内容説明
インドに根付く社会的な身分制=カースト。数千年の歴史のなかで形成され、結婚・食事・職業など生まれから規制し、今なお影響を与え続ける。カースト問題には、「不浄」とされ蔑視が続く最底辺の不可触民=ダリトへの差別がある。政府は2億人に及ぶダリトを支援する施策を打つが、その慣習は消えず、移民した世界各国でも問題化している。本書はインドに重くのしかかるカーストについて、歴史から現状まで、具体的な事例を通し描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
83
インド社会を知るのにカースト(ヴァルナ、ジャーティ)は避けて通れないが、初めにそのあたりをわかりやすくまとめている。しかし著者の関心領域はむしろダリト(不可触民)にあり、ガンディーのハリジャン運動とアンベードカルの運動の対比、ダリトを巡るインドの政治などを概説、そして統計やインタビューを駆使して現代のダリトの実態を立体的に描き出している。差別の現実、そして未だ続く暴力とそれに抗するダリトたちの動き、若者の動向など、現地調査に裏付けられた内容は極めて説得力がある。映画などの紹介もあり多面的な理解ができる。2024/02/19
pohcho
57
インドのカースト制について、一般的に知られる4種のカーストのさらに下にある「不可触民(ダリト)」について書かれた新書。屎尿処理を仕事にする人が悪臭に耐えるため仕事前の飲酒が必須で、その結果アルコール中毒になるというのは悲惨な話だが、昨今は国の優遇制度もあり高学歴のダリトもいるそう。でも、そういう高学歴の人でも自分のカーストを周囲に隠して生きていたり、出自を苦にして自殺する人もいて本当に厳しい問題だなと思う。カースト間の対立で凄まじい暴力やレイプ事件が起きたのも全然知らなかった。いろいろと勉強になる一冊。2024/05/15
よっち
45
インドに根付く社会的な身分制カースト。カースト問題の中でも「不浄」とされ蔑視が続く最底辺の不可触民=ダリトへの差別の現状を具体的な事例を通して描いた一冊。生まれを意味するジャーティと色を意味するヴァルナをもとにイギリス植民地時代に曖昧で体系化されていなかった概念が実体化したカースト制度。政府は支援する施策を打つがもののその慣習は消えず、移民した世界各国でも問題化している状況。カーストによって大きく差が出る進学率、インド社会における食事や結婚など、思っていた以上に根が深く深刻な問題であることを実感しました。2024/02/19
Tomoichi
34
まあ何と言っていいのか、とりあえず単純な話ではなく、部外者がどうこう言える話でもない。でもこういう世界や考え方があるという事実は知識として持つことは大事かもしれない。高いカーストの人は自分よりも低いカーストの人が作った料理を食べないというルールには驚いた。だから料理人はバラモン階級だと。職業に貴賎なしというけれど、それは日本がそれだけ成熟社会になっただけだろう。2024/10/12
魚京童!
27
カーストは楽なのだろう。どの立場に取っても必死になって、制度を変える戦いをするよりは、私は〇〇カーストだからといって、吞んだくれていればいい。あるいは新世界を目指して自分だけ頑張ればいい。だから世界に広がったインドの人は自国に戻ったり、改革を支援したりしないのだろう。自分が頑張る元になったカーストを否定ができない。最初から、高い立場なら、変えるメリットがない。低い人は常に低いままだ。それに甘んじる覚悟を決めてしまったらとても楽なのではなかろうか。殺されることはない。つつましいプライドを捨てるだけなのかもし2024/07/17