岩波新書<br> 百人一首 - 編纂がひらく小宇宙

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岩波新書
百人一首 - 編纂がひらく小宇宙

  • 著者名:田渕句美子
  • 価格 ¥968(本体¥880)
  • 岩波書店(2024/01発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004320067

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内容説明

『百人一首』は,誰によって,何の目的で作られたのか.長らく藤原定家が撰者とされていたが,著者の最新の研究により,後人による改編が明らかとなった.成立の背景やアンソロジーとしての特色を解きほぐし,中世から現代までの受容のあり方を考えることで,和歌にまつわる森羅万象を網羅するかのような求心力の謎に迫る.

目次

序章 『百人一首』とは何か――その始原へ
第一章 『百人一首』に至る道
1 勅撰和歌集というアンソロジー――撰歌と編纂の魔術
2 八代集という基盤――「私」から複数の人格へ
3 『三十六人撰』から『百人一首』へ――〈三十六〉と〈百〉の意味
第二章 『百人一首』の成立を解きほぐす
1 アンソロジスト藤原定家の登場――編纂される和歌と物語
2 『百人秀歌』と『百人一首』――二つの差異から見えるもの
3 贈与品としての『百人秀歌』――権力と血縁の中に置き直す
4 定家『明月記』を丹念に読む――事実のピースを集めて
第三章 『百人一首』編纂の構図
1 『百人一首』とその編者――定家からの離陸
2 配列構成の仕掛け――対照と連鎖の形成
3 歴史を紡ぐ物語――舞台での変貌
4 和歌を読み解く――更新される解釈
5 『時代不同歌合』との併走――後鳥羽院と定家
第四章 時代の中で担ったもの
1 歌仙絵と小倉色紙――積み重なる虚実の伝説
2 和歌の規範となる――『百人一首』の価値の拡大
3 異種百人一首の編纂――世界を入れる箱として
4 『百人一首』の浸透――江戸から現代まで
終章 変貌する『百人一首』――普遍と多様と
『百人秀歌』『百人一首』所収和歌一覧
主要参考文献
図版出典一覧
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

128
藤原定家や勅撰集に関する本を続けて読んだので、改めて百人一首について知りたくなった。今まで定家による秀歌撰と思っていたが、実際は後鳥羽院の介入で新古今集を自由に編纂できなかった定家が鬱憤晴らしに作った私家撰の「百人秀歌」を、後世の誰かが編纂し直したとの経緯を明月記の記述から解き明かしていく。しかも当初はほとんど知られなかったのが、室町以降に和歌の入門テキストとして広まったという。今日の日本人が百人一首のかるたから和歌を知る現状からも、どんな時代でも簡単に受容される定家原案の編纂アイデアの巧みさが光るのだ。2024/09/01

KAZOO

104
百人一首に関する研究書的な感じです。それぞれの和歌については知っていて、この遊びも若いころまではしていたので親近感がありました。しかしながらここに書かれているような奥深い意味もあるのだということもよく知ることができました。「百人秀歌」というのがあり101首の和歌もあるということも初めて知りました。百人一首を題材にした推理小説もあったような覚えがあります。2024/02/17

まーくん

85
従来、藤原定家の編纂と言われていた百人一首が、実は違うということを定家の『明月記』やその他の資料から読み解いていく。最近(と言っても1951年)定家編纂が確かな『百人秀歌』という百人一首と同様、歌人百人の和歌から一首ずつ選んだ歌撰集が発見された。それは定家が息子の岳父である幕府御家人宇都宮蓮生に贈った私的なものであるという。両者は構成が同じで採られている歌もほぼ同じだが歌の並び順が違う他、百人一首には最後に後鳥羽院と順徳院という承久の乱を企てたとして隠岐と佐渡に流された上皇の歌が追加されている。⇒2025/01/15

たま

60
「編纂がひらく小宇宙」という副題が示す如く、百人秀歌と百人一首(ほぼ同じ歌から成るが配列が異なる)を比較し百人一首の「劇化」演出を語る。「このような…演出によって、ある歌、ある歌群は、『百人一首』という舞台の上で、連鎖的にさまざまな声で敗者たちの悲劇や人々の葛藤などを語りはじめるようだ。」最近、平安時代の有名人の恋愛模様や権力闘争に詳しくなっているので、詠まれた状況から切り離し、配列で歌人の生涯をイメージさせる仕掛けを面白く読んだ。バラバラのカルタではなく、声の響きあう詞華集としての百人一首。2024/04/07

hasegawa noboru

23
最近の研究成果だからなのか、たんなる我が身の無知ゆえなのか、合わさってずいぶん新しく知ることが多かった。研究者として当然と言えば当然だろうが、<古典和歌全体の象徴的存在>たる『百人一首』への愛に満ちた一冊であった。<どの一首をとっても、遠い現代に生きる私達の心に響く>。<比類のない輝きを持ち、天性の歌人としか言いようがない>和泉式部の『百人一首』の歌(五六)「あらざらん・・・」は<「この世ではないあの世へ行った私の思い出として、せめてもう一度あなたに逢いたいのです」と訴える。自身を「あらざらん(死んでしま2024/03/11

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