内容説明
非人はなぜ都市に集まったのか。叡尊教団の独自の論理による非人救済活動が、中世の非人身分成立に及ぼした影響とは。中世都市の代表・鎌倉と奈良、中世都市民の代表・非人を素材に、都市に見る中世を読み解く。
目次
表紙
目次
序文
第一部 武家の都・鎌倉
はじめに
第一章 都市鎌倉の構造
1 軍事都市鎌倉の誕生
2 武家の首都へ――宇都宮辻子御所への移転
3 宇都宮辻子御所の大きさ
4 宇都宮辻子御所と若宮大路御所の位置について
第二章 都市鎌倉と鶴岡八幡宮
1 都市鎌倉の宗教的中心「鶴岡八幡宮」の創建
2 鶴岡八幡宮の構造
3 鶴岡八幡宮と祭礼
第三章 都市鎌倉と仏教
1 鶴岡八幡宮と仏教
2 新仏教と都市鎌倉
3 都市鎌倉の経済
第二部 寺社の都・奈良と中世非人
はじめに
第一章 中世都市奈良の四境に建つ律寺
1 白毫律寺
2 眉間寺(廃寺)
3 大安寺
4 般若寺
5 律僧という機能――穢れを乗り越える論理
第二章 中世の非人とは何か
1 中世前期の非人(宿非人)の「職能」
2 中世後期の非人の構成と職能
第三章 非人統轄――非人はどのように管理されたのか
1 非人の統轄
2 中世非人統轄の特質
3 叡尊教団による非人統轄
4 絵図に見る非人統轄
5 非人にとっての中世後期という時代
終章
あとがき
文庫版あとがき
索引
奥付
電子版奥付
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いとう・しんご
8
大桑斉の本きっかけ。前半は中世の鎌倉と奈良の成立の歴史で、後半は鎌倉時代から近世直前までの非人の歴史。後半部分は都市衛生行政史でもあり、福祉行政史でもあり。よく言えば詳細精密、悪く言えば重箱的マニアックな本。研究者が傾けた情熱は伝わるけど、漢文の古文書をそのまま引用されてもなぁ・・・。巻末広告を見ながら法蔵館文庫は色々と面白そうだなぁ、と思いました。2024/09/29
chang_ume
8
叡尊教団による非人統括を通じた中世非人の身分形成を説く。癩者を核とした非人理解、さらに官僧(白衣僧)と遁世僧(黒衣僧)の制度的・質的な差異など、解釈枠組みの提示が明らかで読みやすい。戒律重視を積極的な触穢のロジックとする叡尊たちの姿には率直に感銘を受けた。一方、身分としての非人成立については個人的にやや消化不良で、叡尊教団の非人統括がいかなる社会編成を生んだのか、もうちょっと深く知りたい。もう少し言うと、中世身分を規定するものとは何か。どの条件で身分は成立するのか。2024/05/04