内容説明
新時代の特殊設定ミステリー作家、潮谷験が贈る「愛と記憶のミステリー」
「オスロ昏睡病」という難病から回復した患者は、身体の一部に薔薇の形をした腫瘍ができる後遺症を持つ。35年前に治療法を確立し権威となった医師が殺されたことを皮切りに「オスロ昏睡病」の患者が次々に襲われる事件が発生。自身もかつてその難病に罹った京都府警の八嶋警部補は、犯人の特定と難病治療がもたらした闇に挑む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
70
まさか『薔薇』がそういう設定に使われているとは。型破りな発想が面白い特殊設定ミステリ。難病「オスロ昏睡病」を克服した患者の身体に残る薔薇の形の腫瘍。この後遺症を持つ人は「薔薇持ち」と呼ばれている。ある日この治療法を確立した医者や元患者の「薔薇持ち」が次々と殺される事件が発生。自身も「薔薇持ち」である刑事・八嶋がこの謎の連続殺人の解明に挑む。身体の目立つ薔薇が周囲にもたらす影響、元患者達の悲哀や闇。薔薇の持つ特殊な効果なども明らかになり見えてくる薔薇の本当の意味。前向きで切ない、スッキリとした読後感だった。2024/05/20
よっち
29
回復した患者は薔薇の形をした腫瘍ができる後遺症を持つ難病オスロ昏睡病。その治療法を確立した医師が殺されたことを皮切りに、患者が次々に襲われる特殊設定ミステリ。自身もかつてその難病に罹り、苦い過去を抱える京都府警の八嶋警部補が、マイペースな阿城との軽妙なコンビで犯人の特定と難病治療がもたらした闇に挑む展開で、ある意味納得できるような狂気とも言えるような事件と難病治療の真相でしたけど、それでも未来を前向きに考える若者たちがいて、八嶋がずっと気にかけていたもうひとつの真相がとても印象に残る結末になっていました。2024/01/16
おうつき
15
一風変わった設定を用いて本格ミステリを成立させるのが持ち味の著者だが、今作はその中でも一際風変わりな設定だと感じた。「オスロ昏睡病」という架空の病気が登場し、元患者の間で巻き起こる殺人事件の顛末が描かれる。治療の過程で体の一部に生まれる薔薇のような腫瘍に纏わる謎は読み応えがあった。殺人の謎の方はあっさりしている。2024/10/14
ネムル
6
先の読めない変な具合とミステリの正道をいくような犯人当てとの、絶妙な合わせ技。いかにもなメフィスト作家はときたま読みたくなる。2024/08/24
花嵐
6
★★★★☆ 初読み作家さん。いわゆる特殊設定ミステリ、あるいは記憶の永遠性の証明方法。初めて読む作家さんだが、読みやすい文体だったのですらすら読めた。ミステリなので勿論事件やその事件の謎解き部分も重要ではあるが、それよりも「薔薇」を巡る謎部分が解明されるところが一番面白かった。あとは個人的にはエピローグは上だけでもよかったんじゃないかなぁ、とは思った(下は蛇足に感じられてしまった)が、下があるからこそ物語の導入部分の謎に引き込まれるんだよな、とも思う。2024/02/20