内容説明
1945年頃から1990年頃にかけて、アメリカ中心の西側陣営とソ連中心の東側陣営が対立した「冷戦」。その影響は21世紀の今日にも色濃く残っている。本書は米ソ超大国やヨーロッパの対立のみならず日本を含む東アジアの展開にも力点を置いた通史である。上巻では、1945年に第二次世界大戦が終わり、大国の協調が崩壊して冷戦が始まる経緯から、朝鮮戦争、脱植民地化の進展、さらに62年のキューバ・ミサイル危機までを描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
115
第二次大戦後の国際政治の指導権を巡り否応なく対峙することになった米ソ両超大国だが、従来なかったイデオロギーと核兵器という新たな要素が加わって双方とも相手に滅ぼされる可能性に恐怖した。トルーマンやスターリンも戦争で得た既得権益を奪われるのではとの猜疑心に苛まれた結果、同盟国を巻き込んで世界を分割し、分断の固定化という冷戦へ突き進んでいく経緯を平易に説明していく。朝鮮戦争や印パ戦争など本物の戦いだけでなく、中東や中南米での秘密工作による政権の興亡まで幅広く目配りした記述で、冷戦期の全体像を把握できる。(続く)2024/04/06
skunk_c
68
冷戦の起源からその歴史を新書上下に分けてコンパクトにまとめたもの。上巻は副題通りキューバ危機まで。大戦末期にすでに冷戦の萌芽が出ていたことが記されている。また社会主義(共産主義)イデオロギーの役割を位置づけようとしており、いわゆる現実主義的な論考とはひと味違う(ただしイデオロギーに引きずられているわけではない)。細かい部分にとらわれることなく概説に徹しており、文章が平易でとても読みやすく、非同盟運動などにも目配せがある。世界の現代史を理解する基本図書と言ってもいいか。ただし経済の動きは少し端折りすぎかも。2023/12/29
TS10
14
冷戦史の概説書。上巻では、冷戦の起源からキューバ危機までを辿る。同盟内政治に重点を置いているのが特徴的だ。欧州とアジアにおいて、分断体制は殆ど同時に形成され、スターリンの死後は双方に緊張緩和の機運が高まったと、俯瞰的な叙述は新鮮である。こうした視点から、ベルリン危機とキューバ危機は、米ソがリンケージによって懸案を解決しようとした複合危機であったと位置づけられる。しかし、米ソに欧州を管理されることを恐れた各国は他国間交渉による事態の打開を模索していく。こうして、ヨーロッパ・デタントへの道が開かれるのである。2024/04/26
ふぁきべ
13
東西冷戦の概説書といった趣。冷戦の前史から始まり、その起源、そして冷戦史の概要に移る。この巻ではキューバ危機までだが、非同盟国や第三世界にも目くばせしながら主要なところを落としていないことには好感。やや西側諸国よりな記述は目立つが、基本的には中立で概説書であろうとする姿勢が見える。ここで取り上げられている事象に興味があれば詳細を取り上げた本に移れるような紹介があればなおよかった。2024/02/04
さとうしん
12
冷戦通史の前半部分だが、特に終戦直後の米ソ対立が決定的になっていない時点では米国の世界構想が多くの可能性に満ちており、ソ連側もイデオロギー性の重視が逆説的に外交に柔軟性を与えていたこと、キューバ危機に対してソ連側がベルリン危機と関係づけていたように、同時期の他地域の動向が密接に関わっていることが強調されている点、中南米地域の反米の動きにありもしない共産主義の影を見るななど、ソ連とともにアメリカもイデオロギーにとらわれていたことなどが印象的。2024/03/15