内容説明
〈その日から僕は、死者が視えるようになったのである──〉
それは暗い夜のことだった。
検事である僕・印藤累(いんどう るい)は、夜道に立ち尽くす幽霊の存在に気づいた。
動揺する僕の前に現れたのは「案内人」を自称する親しげな青年・架橋昴(かけはし すばる)。
彼はこの世に未練を遺す幽霊を、ある場所に導くというのだ。
それは、真夜中にだけ開かれている弁護士事務所……その名は「深夜法律事務所」という。
リーガルミステリの旗手が拓く新境地!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
254
五十嵐 律人、新作中心に読んでいる作家です。著者の新境地でしょうか、設定は面白そうだったのですが、実際の事件や登場人物が普通過ぎました。残念。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003827322023/12/17
パトラッシュ
201
犯罪で死んだ被害者の幽霊が視える捜査員とは、小栗旬主演の刑事ドラマ『BORDER』を連想させる。こんな特殊設定はリーガルミステリとは相性が悪く思えるが、死亡時の記憶が欠落していて真相がわからない幽霊を成仏させるため検事と弁護士が奔走するプロセスを加えると、違和感のない物語として成立してくる。しかも関連して起こった殺人事件が幽霊の力を利用したものであり、ストーカー事件揉み消しの疑いをかけられた先輩検事の動機にも有機的につながってくるのだ。死者を視えた法律家が、死者のために一線を越えるか否かが最大のテーマか。2023/12/09
モルク
136
霊が見える検事印藤が真夜中だけ開かれる法律事務所で弁護士深夜と探るリーガルミステリー。真犯人が暴かれない限り成仏できない死者は死亡した場所から動けず夜にだけ深夜の事務所を訪れる。死者と生者のコラボ。いろんな事件が重なってそこに案内人も絡む。死者、霊といっても怖くはない。むしろファンタジーかな。2024/02/22
ちょろこ
133
設定が面白い一冊。現世に留まる死者と、その死者が見える生者が織りなすミステリ。ある日突然、事故や事件で理不尽に命が奪われた死者は罰を受けるべき生者が裁かれないと成仏できないというファンタジーチックな設定が面白い。その死者たちのために検察官、弁護士、案内人がタッグを組んで真相へと導く過程も難しくなく読めて良かった。死者がこの世に留まるせつなさも、正しく裁かれるべき法の在り方も盛り込みながら半透明人間なるものを存分に活かした綺麗なまとまりも満足。三人の志も良いな。読後は冤罪やこの世に残る念のやるせなさを思う。2024/02/02
hirokun
104
星3 五十嵐律人さんのリーガルミステリーは私の大好きな分野でもあり、この作品も非常に期待して読み始めた。期待値が高すぎたためかもしれないが、リーガルミステリーではあるのだろうが、死者が犯罪に参加してくる特殊設定があり、必要以上にストーリーを複雑にしながら、一方で都合の良すぎる展開にあまりリーガルミステリーの神髄を楽しむことは出来なかった。彼の一ファンとし、五十嵐さんには、弁護士としての専門性も活かした本格派のリーガルミステリーを期待したい。2023/12/22