内容説明
もうやめて……ミステリはここまで進化した!
第164回直木賞候補作。
ひたひたと忍び寄る恐怖。
ぬるりと変容する日常。
話題沸騰の「最恐」ミステリ、待望の文庫化。
閉鎖空間に監禁された
デスゲームの参加者のような切迫感。──彩瀬まる
平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、元不倫相手を見返したい料理研究家……。きっかけはほんの些細な秘密だった。
保身や油断、猜疑心や傲慢。
内部から毒に蝕まれ、
気がつけば取返しのつかない場所に立ち尽くしている自分に気づく。
凶器のように研ぎ澄まされた“取扱い注意”の傑作短編集。
解説=彩瀬まる
※この電子書籍は2020年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
293
策士策に溺れる短編5話。ハッピーなエンドは迎えられない事を承知しておりますし、恐る恐る読んだけど、嫌な気持ちはそれ程迄は来ないで済みましたよ。心理描写は流石ですけど。タイトルがナイス。いやさ、手が汚れちゃったら、綺麗にしたいじゃん。出来れば汚して仕舞った事すら悟られずに。だから、そこで拭うよね。そしたら、それが徒になって仕舞うのか。oh, no. それはシステム上やむを得ず。中では『埋め合わせ』がいいね。五木田さん、まぁよう、ぬけぬけと( ໊๑˃̶͈⌔˂̶͈)。千葉さんの、なんと言うかご愁傷様感がね。2024/12/03
馨
163
短編集。芦沢央さん作品好きです。ちょっとしたミス、軽はずみの言動。日常に有り得そうな出来事が、どんどん取り返しがつかなくなって、一人では修習不可になって、他人に利用され巻き込まれ。こういうシチュエーションを書いたら、芦沢さんは巧いと思います。どうにか周りに気づかれずに済ますことは出来ないものかと思う状況が発生したりするけれど、とりあえず起こってしまったら即報告が一番だなと身に沁みます。口は災いの元。見栄を張るのも口車に乗せられるのも絶対だめですね。2024/04/02
ふじさん
136
忍び寄る恐怖、まさに現代サスペンス。自分のしたことが人の死に繋がってのではないかと悩み苦しむ男、プールの蓋をし忘れ水を出しっぱなしにし、その後始末に振り回される教師、認知症の妻を抱えた男の苦悩、映画の撮影中に俳優の薬物中毒が分かり、思わぬ事件に巻き込まれる映画監督、元彼を見返すために金を貸したためにその男に翻弄されることになる料理家等。日常のちょっとしたことがきっかけとなり、崩壊する人生の様を巧みに描くサスペンス、なんか怖い。まさに、汚れを簡単に拭こうとするとかえって汚れは広がるばかり。タイトルに納得。2024/03/09
JKD
112
日常の何てことのないミスやうっかりから派生する負の展開にどう対処するか。やはりそこはまず事実の発覚を知られまいと思考を巡らせるのが一般的だが、この作品集はそれらが裏目にばかり出るので主人公はまだ見えぬ恐怖に怯え増幅され追い詰められていく。どの作品も他人事じゃないようなリアルさで終止ハラハラさせられました。読後にタイトル名の意味を考えるとつい、先の展開をあれこれ考えてしまいました。2024/01/08
yukaring
105
心に隙間に忍び寄る「ちょっとくらい・・」という邪な気持ち。ついつい一線を踏み越えてしまい変容してしまう日常と取り返しのつかない場所に立ち尽くす人々。心の底にどろりとした滓を残すような短編集。高い梯子から落下して死んだクレーマー。彼が死んだのは誰のせいなのか?職場でおかしたミスを隠蔽したいがために必死で小細工を弄する小学校教諭、ある出来事から亡くなった隣人に対する罪悪感で苦しむ男性と彼が知った真実、元不倫相手を見返したかった料理研究家など出口のない迷路にはまりこんでしまった人々の末路を描くホラーミステリ。2023/11/14