内容説明
人間・孔子が生きている
政敵の言葉「仁」に衝撃を受ける孔丘。50代にして母国をおわれ弟子達と放浪した苦しい時期、帰国してから亡くなるまでを描く。
※この電子書籍は2020年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みこ
23
政争に敗れ、諸国を放浪することになった孔子の後半生は文字通り長い旅の生涯だった。同時に十五で学を志し、学問を追求し続けた彼の生涯もまた長い旅路を行く一生だった。国民を思う国の在り方、相手を敬う人の在り方、彼は今の世界をどう見ているのだろうか。2023/12/03
Hatann
8
礼を知ることを大事とした孔丘であったが、基本理念である仁の概念を敵対する陽虎から知らされたという設定に驚く。仁という言葉に初めて触れた孔子の内面を妄想することで、基本理念を肉声化させた。弟子のなかでは顔回などにはあまり触れられず、初期から教団を支えた閔損、秦祥、漆雕啓などが頻繁に登場する。思想家としての成長を高めた十四年に亘る放浪も、優秀なスタッフの支えがあってのもの。師弟関係でなく、トップとスタッフの関係に準えて集団を描くことで、現実社会の人間として成熟していくリアルな孔子伝が浮かび上がる。流石の一冊。2023/12/31
ぴんぐ
4
儒教の祖として神格化されたイメージのある孔丘ですが、この小説では、泰然としていながらも挫折をしたり、政争に巻き込まれたりと、非常に人間らしく描かれています。 また、孔丘を取り巻く、弟子たちの活躍も非常に魅力的です。 孔丘も、はじめから成功したのではなく、何度も国を追われ、流浪しながらも、来るものは拒まず誰にでも、礼を教えながら、自ら学びを続けたという姿勢は大変素晴らしいものだと思います。 儒教の多くの考え方が、2000年以上後の日本においても、精神世界の根底に流れているのを改めて感じました。2024/02/09
kiiseegen
4
文庫版にて再読。2023/12/31
yuki
4
人間「孔丘」を描こうとする目論見が見事に達成されている。学びと教えることに精進したことで身に着けた人間離れした洞察力と、人間的な不器用さのギャップが魅力的。人に教えることは自分の学びにも繋がることを改めて認識した。2023/11/24