内容説明
区役所に勤務する愛子は、同僚女子の陰口を聞いたことがきっかけで、たびたび「発作」を起こすようになる。この世の終わりに直面したような、とてつもない恐怖に襲われるのだ。心療内科で受けた「パニック障害」という診断に納得できず、いくつもの病院を渡り歩き……(「天罰あげる」)。介護施設を併設する高齢者向けクリニックには、多くのお年寄りが集まってくる。脳梗塞で麻痺のある人、100歳近い超高齢者などさまざまな症状の利用者みなに快適に過ごしてほしいと施設長は願うが……(「老人の園」)。「我ながら毒気の強い作品ばかりであきれます」と書いた本人もため息。現役医師が描く、強烈にブラック短編全5編!
目次
天罰あげる
蜜の味
ご主人さまへ
老人の園
注目の的
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ノンケ女医長
42
目を覆ったり耳を塞ぎたくなるような、おどろおどろしい医療行為の描写の連続ではない。人格が崩壊しきった、劣悪な医師も出て来ない。著者の数ある小説の中では相当に読みやすい作品と思われる。患者の視点に立っているので、当事者になった場合にどう立ち回るべきなのかを考えるきっかけを与えてくれた。どんなに急な受診であったとしても、いつ、どこで、どんな医療行為を受けたのかを、自分自身が正確に記録していないと、予期しない災禍に遭遇してしまう、という誰も教えてくれない厳然たる事実を、著者は今作でも教えてくれている。2023/09/29
Karl Heintz Schneider
39
「厳しい説明をするのは、我々の防衛手段だよ。余命を短めに言って、それ以上生きても文句は言われないが、長めに言って早く死なれると訴えられるケースもある。」「たいていの患者さんは嫌な感じです。病気を過度に不安がり、心配し、あれこれ煩わしいことを求めます。わがままで、小心で、そのくせ厚かましい。どの医師も患者さんの愚痴や悪口を散々言っています。」え~っ!こんなこと書いちゃっていいの?現役の医師として、差し障りあるのでは・・・でも逆に嘘がなくリアルな医師の姿だと思えた。久坂部さんは初読みだが、とても興味深かった。2023/10/05
バイクやろうpart2
38
久坂部羊さん作品六作目です。タイトルからして怖そうでしたが、中身は、もっと怖くリアルでした。あまりにリアルさがあり過ぎ、胸が痛む感覚になりました。解説の医者から観た『患者ガチャ』、さらには患者から観た『医者ガチャ』なる言葉も重く感じました。双方がリスペクトし会える社会を期待するばかりです。2024/03/11
空猫
36
「○ガチャ」という言葉がある。商売っ気だけ、3秒診察といったヒドイ医者は居る。そして厄介な患者もやはり居る。現役医師がそんな闇を描いた短篇集。心身症は自身で作った病気か『天罰をあげる』。何もかも恵まれて尊大になるよりはマシだが『蜜の味』。狂っているのは他人か自分か『ご主人さまへ』。要介護老人だからと言って舐めたらいけない『老人の園』。思い込みが病気を作り、素人判断が悪化させる『注目の的』。サラリと読めるが中々にブラックだった。2023/12/15
あゆみらい
20
医師でもある久坂部羊氏の短編作品です。最後の「注目の的」が、現在の新型コロナワクチンに重ねられて興味深かった。確かに治験なら本人に言わずに本物のワクチンを打った人と、ただの生食を打った人がいて、そこで効果に差があるかを検証するはずだし、副反応の割合もそこで比べないと意味がない。主人公がまさに副反応な症状が出ているけれど実は違う薬であった瞬間に衝撃を受けた。老人ホームの話も怖かった。2023/10/02




