内容説明
1925年、牧野富太郎『日本植物図鑑』と同時に『大植物図鑑』を刊行した元・教師がいた。かつては牧野博士を頼り、その後の編集活動では博士の図鑑と当時の人気を二分しながらも、現在はほぼ忘れ去られた村越三千男とは一体何者だったのか? 二冊の刊行日から本国の図鑑黎明期における出版競争を見出した著者が、魅力溢れる「在野」二人の仕事と植物図鑑の歴史を探る。
目次
序章 牧野植物図鑑との出会い/第一章 牧野富太郎の人間像 型にはまらぬ破調の美/「博物図」に見入った子供時代/近代植物学の夜明け時に頭角を現す/個性的で話題の多い私生活/牧野富太郎の業績/第二章 牧野植物図鑑の謎を追う/第一の謎 牧野富太郎と村越三千男の間に何があったのか/『日本植物図鑑』と『大植物図鑑』の出版競争/第二の謎 植物図鑑は牧野富太郎の発明品か/植物図鑑のルーツを探る/第三の謎 なぜ明治四〇年ころに多くの植物図鑑が現れたのか/理科の教科書は身近な自然/第四の謎 牧野が『牧野日本植物図鑑』で「警告」した相手はだれか/おわりに/主な参考文献/略年表/解説 大場秀章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
26
著者が牧野富太郎の『日本植物図鑑』と村越三千男の『大植物図鑑』の印刷と発行の年月日の関係から疑問が湧き、それを解くために調べた結果が本書にまとめられている。「日本植物学の父」とも称される牧野だけではなく、村越のことや植物図鑑が大量に発行された時期の時代背景などにも言及していて興味深い。また、さまざまな植物図鑑が登場することで牧野の図鑑も改良されていき、一時はいがみ合っていた村越とも仲直りし、より良い図鑑が作られていったのは素晴らしい話だと思いました。今度は植物図鑑をじっくり読んでみたいです。2023/06/26
スノーマン
18
朝ドラ『らんまん』演者の神木くんの印象で、なんだかんだ憎めない。生身の牧野はどうなのかと思ってたけど、残っている文章から滲み出るプライドと愛嬌は、主人公感あるわー。自分以外の植物図鑑がたくさん出たのは、インチキ呼ばわりしながらも訂正したり校訂したりして、なんだかんだ嬉しかったんじゃないかなぁと思っちゃう。教科書がなく、地元の草花観察をさせる(教師は図鑑が必要になった)理科の授業の最初の在り方なども興味深かった。2023/08/02