内容説明
心臓移植経験者である南美希風は、その移植手術を執刀した恩人の娘であるエリザベス・キッドリッジの長期休暇に合わせて日本中を旅していたが、行く先々で不可解な事件に巻き込まれていく。すべてが反転した“あべこべ”の密室。雨中、庭に放置された全裸の被害者。悠久の森に佇む異質な殺人現場。シリーズ史上最高となる圧巻のロジックで名探偵・南美希風が奇跡の不可能犯罪に挑む! 柄刀一版“国名シリーズ”ここに完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪紫
57
柄刀一版国名シリーズ完結(なお、有栖川さんはまだ続く)。本家のキーワード、あべこべな現場、全裸(死んでないけど)、余計な行動で執拗に疑われる第1発見者から構築され、また3種類の密室それぞれが個性的で面白い。また、本来は9作だからこその流れの寂しさと切なさも。密室は「樫鳥」。全体的には「橙」が面白かった。(芸大の文化祭の趣向もあって)元々本家があべこべな理由に「いや、やってる途中でバレるだろ!そこ指摘してよ」や犯人の努力の方向音痴が気になって集中出来なかった分、そういう要素がなかったのも多分あると思うけど。2023/10/05
rosetta
28
★★★✮☆国名シリーズも完結らしい。3編入っているが、半ば程の長さのある表題作がやっぱり一番面白かった。この手のトリックとか目で読んだだけでは理解出来ないものも多いが、この話は自分でも着いていけた💦ホント新本格とか複雑にすればするほど良いとばかりに図を見ても分からない、なんなら動画をつけてくれ!っていうのもしょっちゅうだ。そのうちQRコードをつけた小説が出るんじゃないか?それはそれで小説の敗北という気もするし、新しいエンタメの複合、統一という気もする。なんかこの本の感想と関係なくなった(笑)2023/10/19
RASCAL
18
南美希風の国名シリーズは2冊目、オマージュというか、本家のエラリーの方は読んでいません。東野圭吾さんの作品から続けて読んだのですが、比較すると読みにくいというか、状況を把握するのに苦労しました。これも本格ミステリといわれるものの故でしょうか。表題作はなかなかにひねりが聞いていて面白かったです。 2024/01/08
だるま
17
エラリー・クイーンの国名シリーズの柄刀一版。クイーンのは全て長編だけど、柄刀版は長編中編短編と様々で、この第4弾にはチャイナ、スペイン、ニッポンの3作が収録されていてこれで10作が完結。クイーン版にある重要なモチーフが使われているのは全作品共通で、チャイナでは密室殺人で現場の家具があべこべ、被害者の服もあべこべ。スペインでは被害者が裸、等々。それらを本家を上回る程の魅力ある謎解きにしなければいけないので大変な労力だろうが、肩を並べる位には成功していると思う。余計な描写の無い、純粋な本格ミステリが楽しめた。2023/09/18
イシグロ
15
南美希風の或る国名シリーズも四冊目でこれがラスト。今回は『チャイナ橙』『スペイン岬』『ニッポン樫鳥』の三本です。 実は柄刀一は読むたびに「そう言えばこの人の文章、なんか苦手だった…」と思ってしまっていたのですが、今回もそうでした。 なんだろう、この人の古典ミステリロマン主義みたいのは嫌いじゃないどころか好きだし、正攻法のロジックもトリックも常にクオリティを保っているとは思うんですが、いつもうまく乗れないんですよね。地の文で登場人物の感情を説明しすぎるところや感傷的すぎるところが苦手なんだと思うんですが…。2024/02/20