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内容説明
フェルナンド・ペソア(1888-1935)。
〈「わたし」とは確固とした個人であるどころか、無定形な多様体で、自分自身にとっても捉えどころがない。21世紀の今でこそ自然に思われるこの考えを、ペソアははるか以前に先取りしていた。自分とは別人格の〈異名者〉たちを案出し、たったひとりで宇宙全体を体現するようなこの不思議な人物は、どのような人生を送り、何を考えていたのだろうか〉(「あとがき」より)
70もの人格を作り作品を書き分け、没後に2万7500点以上の草稿が発見されたポルトガルの国民詩人ペソア。この20世紀の巨人の生涯と言葉を丹念にたどり、豊富な引用と貴重な図版を合わせて、この稀有な詩人の魅力の全貌に迫る。ペソア入門としても最適な、本邦初、待望の本格評伝!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
37
昨日開催された立教大学の澤田直 教授の最終講義に参加するために手に取った。怠けていてイベントまでに読了出来なかったが、なんとか読み終えた。 最近、ヌーヴォー・ロマンやガタリ、デリダなどと、やや背伸びして堅い本ばかり読んでいたので、それに比べると下り坂を自転車で走っているような爽快な読み心地だった。/ ペソアは、ポルトガルの詩人・作家で、70もの人格(異名者)を作って作品を書き分けた。死の前年に出版された詩集『メンサージェン』などを除けば、生前にまとめて発表された作品はごく僅かで、死後二万七千点余りの→2025/03/08
踊る猫
32
ペソアとは「誰」だったのだろう。たくさんの異名(別名義)を使い分け、多作を示しつつ同時に忘れがたい大部の『不穏の書』を記してしまった男。孤高のたたずまいを示すこの人物を、澤田直は豊富な資料も然ることながら実に情熱的で精緻な読解を駆使してほとんど丸裸にしてしまう。そこから見えてくるのは実にスットコドッコイというかなんというか、恋をしては空振りに終わったり詩を書いては未完に終わらせてしまったり、到底取り澄ましたところのない男の姿だ。そんな、ある意味発達障害的なスットコドッコイさこそ逆に読者を惹くのかもしれない2024/05/27
夏
27
ペソアのことはよく知らないが、わたしの好きなアントニオ・タブッキがペソアのことを敬愛しているので手に取ってみた。このような本格評伝は本邦初らしく、貴重な本に出会えたことが嬉しい。ペソアは異名者を数多く持つ詩人であることを初めて知った。ペソアは違う名前、違う人格の人物を作り出し、それぞれ特徴の異なる詩作をしていたのだ。そんなペソアは生前はあまり評価されることがなく、死後になって世界中で評価が高まったという。参考文献の数も多く、著者の力の入れようがわかる。ペソア初心者のわたしにとっては、読みやすく面白かった。2024/06/08
まえぞう
22
ポルトガルの詩人、ペソアの評伝です。ご本人の作品を読んだことはなく、異名ということくらいしか知識はありませんが、興味深く読めました。多重人格ではなく、色んな視点から見てみようということでもないようで。旅をしているんだという形容が最もしっくりきます。たまたま手に入ったポルトガルの海くらいは読んでみます。2024/04/03
かもめ通信
22
最も偉大な芸術家とは、最も強烈に、最も深く、最も複雑に、自分以外のすべての存在を生きる者です。(p95)とペソア。異名毎の作品分析、その社会的な立ち位置、ペソアの人生と異名者たちの人生の交わりとすれ違い……。あとがきで著者はペソア伝であると同時に、ペソア入門でありたいと考えたと語っているが、正直なところペソア初心者にとって、この大作を読み切るのは難しいかも。もし挫折しそうになったら、著者の熱い思いがこもった本書のプロローグに目を通した後、『新編 不穏の書、断章』(澤田直訳)を手にすることをお薦めしたい。 2024/03/25