内容説明
学生はワンコインで食べられる夜食専門店。痩せて可愛くなりたい若葉、何を食べてもおいしくない学年トップの小春、オーガニック料理だけで育った凌真......。悲しみや寂しさを少しずつ消化できるように、店主の朝日さんは愛情を込めた一皿をつくる。孤独な心に力が満ちて、止まっていた時間が動き出す。世界一優しいお夜食で再生していく感動作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Karl Heintz Schneider
47
「この世でいちばんあったかくて優しい食事は夜食だと思うから。」お夜食処あさひの営業時間は朝8時から夜10時。開店時間と閉店時間が逆じゃない?と思うが、この店には、そんな店主・朝日の想いが込められていた。高架下商店街の狭い路地にあるその店の看板は普通に歩いていたら見落としてしまいそうなほど小さい。この店の存在に気づいて扉をくぐる人は、お夜食を必要としているのかもしれない「そんな思いを抱えて店を訪れる4人の物語。第5話にだけは店主の想いが綴られている。2023/10/18
れもん
32
電子書籍。土井善晴さんの本を読んだばかりで、どれだけ食事が大切なのかを理解した上でこの本を読んだので、とても心に沁みわたる温かさを感じられた。問題を抱えたお客さんがふらっと立ち寄る『お夜食処あさひ』で、店主の朝日さんが作る料理はどれもシンプルだけど、その料理がお客さんの心をほぐし、解決の糸口を見つけてあげるストーリー。飼い犬を亡くしてしまった青年の話が印象的。他人には決して伝わらない青年の気持ちが痛々しく、とても切なかった。『食べることは生きること』この言葉を噛みしめ、心に刻みたいと思った。2025/09/09
たまきら
32
「あの花」の作家さん、娘さんチョイス。食べ物の持つ力を信じている私には、とても自然に受けとめられる小説でした。伊丹十三さんの映画「たんぽぽ」で、首から人参をぶら下げた少年のエピソードがあったなあ…とちょっとしんみりしました。さよならごはんより、いいタイトルがある気がするけどな…。2024/12/07
わむう
26
学生は百円、初回はなんと無料で食べられる「夜食処あさひ」。匂いと温もりに、心が冷えた学生たちがやってきます。高校受験に失敗した子、毎日、孤食をしている子、マクロビオティック信仰の母親を持つ子など。心も体も喜ぶごはん、そして何よりも、きちんと作りなさいというプレッシャーではなく、手抜きでもいいよというメッセージが有難いです。店主の過去が明かされてないので続編で、明かされるのかな?2024/06/15
はるれんママ
20
汐見夏衛さんの作品は娘と一緒に定期的に読ませていただいてます。母と娘がテーマになっている事が多いので読んだ後必ず私も自身の態度を省みるのですが。今回はご飯がテーマ。確かに子供の時って自分の好きな物より親が出すご飯が当たり前に食べてました。それが必ずしも良い思い出ばかりではない事も。作中の朝日さんも言ってたけど、やっぱり生きる事とたべる事は表裏一体。笑顔で美味しいって食べられる事ってすごく大事と思えました。2024/09/23




