滅ぼす 下

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滅ぼす 下

  • ISBN:9784309208886

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内容説明

経済大臣の秘書官ポールは、諜報機関で重きをなした父や家族と関係を修復する。冷え切った妻との間に見える光。絶望的な世界で生きる個人の自由の果てを描く作家による現代の愛の物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

starbro

186
ミシェル・ウエルベックの最長編、上・下巻、650頁弱、完読しました。仏大統領選の投票結果がクライマックスかと思いきや、最後は壮絶な夫婦の愛の物語でした。翻訳物、今年のBEST20候補です。私読書史上、最長時間(約3時間)のフェ●チオシーンが登場しました(驚) https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309208886/ 【読メエロ部】 2023/08/25

やいっち

84
法外な(?)期待に背かぬ作品。(主に欧米だが宗教や経済、政治など)世界の動静、科学技術、(夫婦や家族親族といった)男女の有り様など、卑近から高邁に渡る視野と関心(取材勉強)が土台になった構想力がある。「素粒子」に衝撃を受けて以来のファンとして今後も期待大。2023/10/30

どんぐり

82
植物状態から脱した父親の介護ときょうだい間の家族関係に綻びと絆をみせながら物語は進んでいく。セックスレスから妻との夫婦関係を取り戻したポールは、突然がんの診断を受ける。腫瘍を切除する積極的な治療選択があったにもかかわらず、生きる意欲も意義も放棄して従容として死を受け入れてゆく。生きることに足掻くこともないので、彼の行動規範は少しわかりにくい。このニヒリズムはどこから来るものなのか。人生の終焉を迎え、「私たちは生きることにあまり向いていなかったね」と夫婦で語り合う輪廻転生。涅槃(ニルヴァーナ)の境地か。→2023/09/11

syaori

79
下巻では、上巻に続き主人公ポールを巡る様々な出来事を通して、欧州の移民問題や「ありえない」高齢者福祉の現状、「利潤の誘惑が他のすべての人間的な動機に取って代わ」れるという信念の果てに「虚脱状態に陥ろうとしている」現代の姿が炙り出されます。本書はそんな「死を宣告され」た西欧近代の物語であると同時に、その世界を生きようとする人間、ポールの物語でもあり、近代以降の西欧を支えた啓蒙主義や自由主義、合理主義、生と性と死についての作者のシニカルな哲学が巧みに昇華されているにも関わらずとても暖かなものが胸に残りました。2024/01/19

ヘラジカ

58
スケールの大きな国際的陰謀が不穏さを醸し出しているものの、全篇通して軸となるのはヒューマンドラマである。ウエルベックらしからぬ、と言うと語弊があるかもしれないが、温かで素直な家族愛に驚かされたのも事実だ。作者自身の死への臨場感を投影しているのか、後半の展開は迫真の筆致で感動させられる。しかし、「滅ぼす」というタイトル(原題での別の意味)あらゆる騒動に対しての決着のつき方を考えると、能天気に目頭を熱くしてる場合ではないのかもしれない。素晴らしく楽しい読書だったとは言え、やはり妙な不安が残る作品だった。2023/07/28

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