内容説明
天明の浅間焼け(大噴火)で土石流に襲われた鎌原村。村人の8割が死に、高台の観音堂に避難した者など93人だけが生き残った。現地に派遣された幕府勘定吟味役の根岸九郎左衛門は、残された村人を組み合わせて家族を作り直し、故郷を再建しようとするも、住民達の心の傷は大きく難航していた。出世頭の若き代官・原田清右衛門が進言するとおり、廃村と移住を選択すべきなのか、根岸は苦悩する。さらに幕府側にも不穏な動きが――。「故郷」と「生きる意味」を問い直す物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
初美マリン
86
天明3年に起こった浅間山大噴火の災害と復興を描いている。各地に地震や豪雨など頻繁に起きている現代、そのまま違和感なく読めた。復興に携わった人々の奇跡の物語だった。2024/08/03
ゆみねこ
67
天明の浅間山大噴火で土石流に襲われた鎌原村。村人の8割が土砂に埋もれ、高台の観音堂に逃げた93人だけが生き残った。現地に派遣された幕府勘定吟味役の根岸九郎左衛門は残された村人を組み合わせて家族を作らせ、故郷を再建しようとする。心に傷を負った村人たち、根岸の行動に無理解な幕府。「故郷」と「生きる意味」を描く物語。根岸がとても魅力的に描かれている。2024/01/27
信兵衛
21
とにかく面白く、そして見惚れてしまうのが、農民たちの中に入り込んで陣頭指揮を執る、根岸九郎左衛門という人物。 実在の人物だという点も注目どころ。2024/02/28
Atsushi Kobayashi
20
火山でなくなった村を復活させるお話。ちょっと時代小説からはずれる気がしますが、一気読みでした。2024/07/27
えりまき
18
2024(96)江戸時代、浅間山大噴火後の村の復興小説。現地に派遣された幕府勘定吟味役の根岸九郎左衛門。山津波(土石流)で村民の8割を失い、生き残った人々で「家族」を作り助け合う。「心に似た傷を持つ者同士で、もう一度家族を作る。女は妻亡き人の妻になり、男は夫亡き人の夫となる。親を失った子は、子を失った親と親子の契りを結ぶ。縁あって生を拾うた者たちで、新しい家族になるんじゃ。」。「浅間の中腹に広がる奇岩群を、根岸はかってに『鬼押し出し』と名付けた。」 2024/04/09