内容説明
中堅製薬会社のMRである紀尾中は、自社新薬の「診療ガイドライン」第一選択Aグレード決定のために奔走する。決まれば年間売上1000億円超のメガヒット商品となる。難攻不落、MR泣かせの大御所医科大学長からようやく内定を得た直後、外資ライバル社の鮫さめじま島による苛烈で卑劣な妨害工作で一転、新薬はコンプライアンス違反に問われる……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
266
もっとガッシリした長編だと思っていたら、連作短編のような滑り出し。それはそれでまずまず面白いが、中盤以降のバスター5の話しになってからが本領発揮。中身が濃いとは言い難いものの、スルスル気持ちいいテンポで読める。見も蓋もないことを言ってしまえば、稚拙な嘘を暴いてひっくり返すだけの話なので、難易度が高いほどカタルシスも増す訳だが、その辺りがやけにシンプルな作りで、良く言えば広い読者に分かりやすく、悪く言えばこの手の作品をたくさん読んでいると物足りない。下巻でまた違ったトラブルがあるようなので、まだ評価は保留。2023/04/17
カブ
40
著者、久坂部羊氏の医療物は面白い。今作も文庫で上下巻だけどきっとサクサク読めてしまうだろうとの予想に違わず面白い。薬の営業ってプロパーって言ってなかったかしら?今はMRっていうんだ...から始まってどんどん引き込まれる。下巻も楽しむ。2023/04/13
みこ
24
大阪の製薬会社を舞台にMRたちの奮闘を描く。主人公サイドの善と敵役サイドの悪がかなり極端に色分けされていて、池井戸潤作品を読んでいるかのよう。はじめは小さな事件の積み重ねが物語全体の大きな流れにつながっていく様子も池井戸作品で読んだ気がする。元々良い意味で作風が安定しない作家だけに今作はそれなりに意識して書いたのだろう。2023/05/26
ロボット刑事K
22
プロパーがMRと呼ばれるようになって、もう30年以上経つことや、医薬品の営業であるMRが薬学部出身でなくても資格を取れば成れちゃうこと、MRが結構な高給取りであること、知りませんでした。さて。久坂部羊氏の医療関連のお仕事小説、チョウ面白いです。MR版半沢直樹ってカンジで、MRは私の全く知らない分野の職業ですが、非常に興味深く読めました。半沢直樹にしろこちらの作品にしろ、結局は営利目的企業のやったやられた、正義とか勧善懲悪の話ではないんですけどね。☆4つ。下巻が楽しみ。主人公側が勝つのはお約束でしょうけど。2025/03/10
Y.yamabuki
22
上巻冒頭より数章は、助走と言ったところ。トラブルを通じて、MRと医者の関係を描き、若手MRの紹介にもなっている。ここに登場する医者の余りの酷さに絶句。けれど社内でのMR同士の会話も患者側からみると余り気持ちのいいものではない。患者ファーストと言いながら、MRは会社の利益、医者は自分の実績が気になる。それも当然なことで、難しいところなんだろう。その後本題と言える所長の紀尾中の案件になると俄然面白くなってくる。2023/06/27