内容説明
京都府警に持ち込まれた傷害致死事件。引きこもりの大学生が、異様な姿で死亡した。伏見署に連行された母親は「娘の身体を突き破って悪魔が出てくる」と興奮気味に話し、供述は要を得ない。夫の事故死をきっかけに彼女がのめり込んでいた新興宗教は、「悪魔祓い」と称して、信者に加虐的な扱いをすることもあったという。遺体の状況から、母親の虐待を疑う京都府警は、検屍と司法解剖を千夏に依頼するが……(「エクソシズム」)。京都市北区の河川敷で、首のない遺体が発見される。被害者は刺青があり、小指も欠損していることから、暴力団関係者とみなされるが、身元はわからない。激しい暴行を加えられた後、首を切断するほどの動機とは一体何なのか? 現場に駆け付けた検視官の都倉は、何かしっくりしないものを感じながらも、何が違和感なのかわからない。司法解剖を担当した千夏の見解を聞くうち、都倉はあることに気づく。(「梟首」)など、4話を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ma-bo
102
小松さんの作品は初読み。法医解剖医の加賀谷千夏が主人公。舞台は京都。作者の小松さんは現役の解剖技官との事で、司法解剖の描写が詳しくてかなりリアル。異常死体に隠された真相を見抜いていく4篇の短編集。視点が新人解剖技官や、女性検視官、千夏の幼馴染の警部補、上司で教授と周囲の人達の目線で描かれるからこそ千夏の輪郭が浮かび上がる構成。冒頭で示された千夏の過去は未解決、心の内はあまり明かされなかったので、シリーズ化していくのかな。2023/04/21
茜
60
遺体鑑定医の仕事はテレビのドラマなどで観たことはありますが結果の報告とかで、実際にはどのようにしているのかまでは知りませんでした。なので、興味深く読みました。著者である小松亜由美氏は某大学医学法医教室にて解剖技官を務めているということなので、作中の遺体解剖の描写はリアルで想像しながら読んでしまうと私のような小心者にはハードに感じてしまいます^^;千夏の背景をもっと知りたいので続編が出たら読みたいと思いました。 2024/03/14
坂城 弥生
58
章が変わるごとに視点が変わってて、色んな視点から物語や加賀谷千夏という人を見れた。2023/03/20
さっちゃん
55
前作で個人的にうーんと思った軽重どっちつかずな雰囲気は、今作ではちゃんと落ち着いた法医学ミステリに仕上がっている。解剖での死因究明がメインの作品で、現役解剖技官だけあり解剖シーンは臨場感たっぷり。4編+エピローグの連作短編は各章で語り手が代わる。天才と呼ばれる加賀谷千夏を、加賀谷の助手の解剖技官・久住、加賀谷を信頼する女性検視官・都倉、加賀谷の幼馴染み・北條警部補、加賀谷の上司・柊教授ら周辺人物からの視点で見ていくのが面白い。加賀谷の過去が宙ぶらりんのままなのは続編ありきなのかな? 続編楽しみに待ちます。2023/05/23
papako
53
前作はちょっとばかにしたような狂言回しが気になったけど、京都が舞台ということで読んでみた。ずいぶん読みやすくなっていたかな。解剖の細かい描写よりも周りの刑事や助手などの人に焦点を当てた作品って感じでしょうか。面白くないわけではないけど、主人公の千夏の過去や内面がまったく明かされないのでもやもや。続くのかしら?ってこちらで検索したら次は出そうですね。2024/11/10