内容説明
ソ連のペレストロイカによる自由な風のもと、アシモフもディックも知らぬまま、熱い想いで書かれた独創性溢れる傑作13編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
maja
18
カレル・チャペック賞の応募作や受賞作を中心に1980年代にチェコのSFが復興した状況をたどるチェコSF短編小説集13篇。当時を代表する海外SF作家たちに触れる機会が無かった世代という。各作品に落とし込まれた世相の反映が解説に詳しい。座頭市がヒントになったというオンドジェイ・ネフ「口径七・五二ミリの白杖」ヤン・フラヴィチカ「あのころ、どう時間が誘うことになるのか」エドゥアルト・マルチン「新星」ヤロスラフ・イラン「パーサーの本をお買い求めください」などがお気に入り。2023/08/10
夢の中で枕濡らし
15
お世にも珍しいおチェコの小説集でありますが、このお本を家から3番目くらいに遠いおイオンにて見つけたときそれはそれはビビビビとチェコ国旗の点と線が集まるデルタアタックみたいな3点バースト地点に自分がいるかのような錯覚にまではならなかったが、このお本をレジに持っていく際には「洋書一通り読んで、ここにたどり着きましたわ」顔してレジの研修中の店員さんに静かに爪を見せてしまった。13編収録していたが、最後の100頁弱の「片肘だけの六ヶ月」は世界観に浸れる。20頁から50頁くらいの短編は印象深いものと他の差が激しい。2023/05/14
梅子
2
初のチェコSF。後書きの「アシモフもクラークもディックも知らぬままに」という文言に惹かれ、手に取る。もっとナイーブな感じかと思いきや、どれもハードで大胆で申し分の無いSFばかり。「……および次元喪失の刑に処す」と「片肘だけの6ヶ月」が凄まじく印象に残った。前者の、"2次元視点から3次元を描写する"という前代未聞の試みが愉しかったし、後者のイスラム法典シャリーアとディストピアと歴史シミュレーションが融合した舞台に、純文学ばりの不条理小説を展開する恐るべき発想に、チェコ文学の底なしの闇を感じてゾクゾクした。2023/06/28
takao
1
ふむ2025/06/14
Reading Monster
1
その国の文化がSFは反映されやすいのだろうか、それともSFを書こうとする人の特徴として、その国の現在と未来をしっかりと見つめるビジョンを持っているのだろうか。チェコという国のことを何も知らないで読んでいるのに、なんとなくチェコという国の風刺だと分かる作品もあり、おもしろい。2024/02/07