内容説明
暦法改新から9年。旧六連合域には民主制を標榜するブレザン率いる協和派と、六連合の復活を目指すイネッサー率いる護民派が割拠していた。ジェダオは、自らの不死を維持しようとするクジェンの手によって復活し、彼のもとで艦隊を率いて出撃する。一方、チェリスは姿をくらまし、六連合の復活を阻止しクジェンの野望を挫くべく独自の動きを見せる。銀河を巻きこんで各者の思惑が交錯する中、いよいよ最終決戦が迫る。『ナインフォックスの覚醒』『レイヴンの奸計』につづくローカス賞受賞三部作完結編。2019年ヒューゴー賞、クラーク賞候補。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もち
13
「おまえはもう誰にも愛されないよ」◆蜂起から9年後、宇宙は混乱の最中にあった。分裂したケルの2人の司令官、蘇った狐と不死の王、暗躍する烏と贄狩りの欠片。各陣営は引き寄せられるように、旧暦が残る砦へ集結する。虐殺の再現か、防衛か、暦奪還か――■なんて面白さ、感無量だ。喰えない最強の九尾に一瞬でも惹かれたのなら、必ず見届けてほしい。惜しみなく明かされる新事実や回想により、シリーズ最終作だが各人物への印象ががらりと変わる。激戦の果て、彼と彼女らしい希望が光る、静謐な結末へ。2023/01/12
スターライト
7
The Machineries of Empire三部作の完結篇。数学によって物理法則にも影響を与える暦法が支配する独特の宇宙を舞台に、暦法改新により民主的な世界を作ろうとしたチェリスが霊体ジェダオの錨体となって、不死を維持し己の意のままに宇宙を制しようとするクジェンとの戦いを描く。だが前二作ほどの戦闘シーンはほぼなく、ジェダオとクジェンの駆け引きがストーリーの全編を覆う。モスや僕扶などの魅力的なアイデアも秀逸。新時代のスペースオペラ。2023/08/18
さとみん
6
愛と憎しみは背中合わせの感情というが、それが他人に誘導されていたとしたらどうだろう?記憶の欠落、埋め込まれた人工的な本能。そして人為的に作られた存在。野心と打算と「この世界」に対する認識の相違。チェリスとジェダオ、全く違う時間軸を生きるはずだった二人の時が重なり、また同じことを繰り返すのか、と思わせてのあの結末。この物語に対する私の理解は完全には追いついていないが、世界観はとても好きだから短編も翻訳されると嬉しい。ミコデズをもう少し深く知りたいから彼らの話なんてないかな。2023/02/04
へ~ジック
1
最近知ったアマザラシのアンチノミーで「革新によって安寧は壊されてしまう」と歌われた。その通り、前巻で行われた暦法改新で六連合は混乱に陥る。これはその最後の後始末のお話し。人々に自由を。忠誠も服従もどこかで自由な医師が必要だ。そして異端を忌み嫌いながら必要とし、場合によっては自ら作り出す矛盾を糺すのだ。2023/02/18
(ま)
1
暦法と数学が支配する権謀術数の専権機構に対する叛乱ミリタリーSFナインフォックスの覚醒3部作完 登場人物の性格が変わったような...2023/01/27