内容説明
異端の天才科学者アイザックは、〈鳥人〉ヤガレクの依頼に応えるべく、飛翔理論の研究を進めていた。だが、検査サンプルに紛れ込んでいた謎の幼虫が羽化、圧倒的な力を持つ夢蛾スレイク・モスとなって、住人を無差別に襲い始めた。モスを解き放ったことから追われる身となったアイザックは、ヤガレクとともに夢蛾を追って卑しき都市をさまようこととなる。『都市と都市』で読書界を驚愕させた作家のスチームパンク超大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どらがあんこ
9
SFオールスターかなって。これだけニュー・クロブゾンが魅力的なのはこの空間が均一さに還元できないからだと思う。ただ細かいだけでなく『都市と都市』でテーマになっている都市の二重性も描かれる。あと巻頭の地図は良くも悪くもいいフィルターになってるかなと。2018/11/19
宇宙猫
9
体を作りかえられるリメイド・鳥人・サボテン人など多くの種の存在を生かせていないと思いながら読んだが、最後のヤガレクが羽を抜いて人として暮らすため街に入って行ったところで、彼が鳥人であった意味や、”雑多な者たちが暮らす”都市を表現するために多くの種が必要だったと納得した。でも、少々過剰かな。こちらの理解が追い付いていないだけか。2013/01/18
斑入り山吹
6
科学と魔法の区別はどこですればいいのだろう?とかいう古典的な面白さもある。それぞれの種族のネタだけで本が書けそうなのに、あまりにもさらりと通り過ぎる。はなしのまとめ方、終わり方も流石、という感じ。しかし1回読んだだけでは???というところが多くて、もう一度読み返そうとしたのが間違いだった。痛すぎて、2回目は挫折した。だからあの爺さんが誰だか分からずじまい…。2013/10/16
ドル箱
6
総評、さて都市物語だが私には「都市と大空」=「電子脳論学」に見えました。SFのようでSFでは無い所も多々見れました。どちらかというと童話スチームパンク。タイトルの駅は実はサーバー(コンピューター)の役割と線路はケーブル、そしてミエヴィルが書きたかった「川」がこの物語の深さを根底心理で描いている。都市と駅と川、この三要素が地盤となりこの物語が書かれたのではと考察しました。プロット的にはややカタルシスな面もありますが、噛めば噛む程味わいが出る作品と評価しましょう。そして翻訳者の日暮を褒めましょう。良い翻訳本。2012/12/14
くらっくす
5
飛翔する力を依頼したヤガレクの在り方に代表されるように、コンストラクトや主人公アイザックの思考、そして都市の存在までもが、弁証法的に語られている。羽化した夢蛾は生命の精神を喰らう。その討伐というファンタジーとしての主軸を据えつつも、何を見ないようにして行動するのかということや、危機エネルギーという概念などに、都市全体が孕む闇を投影している。鏡越しに夢蛾を捉えるという戦術も、その一端かもしれない。だからこそアイザックが讃えられる道は語られない。最後は汚れきった都市に染められ、呑み込まれていくのだろう。2021/08/10