内容説明
「健康のために運動する」これは現代社会がもたらした考え方であり、人類は運動するために進化してきたわけではない。それにもかかわらず現代人にとって運動が健康に役立つのはなぜか。進化生物学者が、近代人が作り上げてきた運動にまつわる神話を再検証する
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
119
運動とは現代的なものである。多くの人が抱く運動は健康的な行為というイメージは、神話に過ぎない。狩猟採取民族のフィールドワークによると労働時間は約七時間で、活発な活動はせいぜい一時間程度であり、わざわざ無駄なエネルギーを使う運動などはしない。運動の医療化、商業化、産業化が進んだ現代では、運動不足は病的だと捉えられるが、座っていることは新たな喫煙といえるのか?前著「人体600万年史」で進化医学からの観点で人体を捉えたが、本書では運動のみならず、休息、睡眠、スポーツに関する現代の神話について楽しみながら学べる。2022/11/15
ばんだねいっぺい
23
思い込みがペリペリと剥がされてゆく。意思あるところに運動あり。身体の声を聞いたり聞かなかったりがんばりたい。トレードオフというのが、そりゃそうかだが、なんとなくせつない。2024/09/11
テツ
16
人類が過剰なカロリーを得ることができるようになったのなんてつい最近のこと。その歴史の大部分は飢えとの戦い、食物を得るための戦いだった。人類が運動を好むなんていうのは極々近代的な迷信であって、本来は無駄にカロリーを消費するような行動は避けるのがあたりまえだった。ぼく自身は能動的に身体を動かすのをわりと好むのだけれど、これも近代的な贅沢な嗜好品なんだなと改めて感じる。人間は運動を好むようには創られていない。それでも現代社会で健康に暮らすためには運動を避けては通れない。不思議で滑稽な話だよな。下巻にも期待。2023/07/20
あつお
9
運動のメリットに疑問を投げかける本。 この本は、運動のメリットに疑問を投げかけ、人間の本能的な怠惰さを探る。主な内容は、①怠惰と②パワーと持久力で、人間がエネルギーを節約しようとする本能や適応した運動スタイルを詳しく解説している。また、現代社会の運動不足は不自然な環境に起因するとして、運動の重要性を説いている。この本は、読者に健康的な生活を心がけるよう促し、自分の体と向き合うことの重要性を教えてくれる。2024/05/31
yuma6287
8
一家に一冊この本を置く時代が来るかもしれない。昨今食傷気味の健康情報。特に健康に対して運動するのは過剰なくらい人気を博している。本著は世間が作り上げた、運動に纏わる話題(神話)と現代人に最適な運動量について検証している。進化人類学や、医学、比較生物学といった多角的な視点は勿論の事、大量の参考論文があり、とても信頼できる。今でも太古の狩猟生活をした部族が、研究機関との取引で金を稼いでいるといった話や、寝る時間は8時間でなくともよいといった話が面白かった。後半が楽しみだ。2023/11/17