私が陥った中国バブルの罠 レッド・ルーレット:中国の富・権力・腐敗・報復の内幕

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私が陥った中国バブルの罠 レッド・ルーレット:中国の富・権力・腐敗・報復の内幕

  • 著者名:デズモンド・シャム【著】/神月謙一【訳】
  • 価格 ¥2,860(本体¥2,600)
  • 草思社(2022/08発売)
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  • ISBN:9784794225993

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内容説明

起業家である筆者は、中国の権力と富の頂点に登り詰めるが、突然、元妻で共同経営者のホイットニーが失踪する(2017年9月、今も行方不明)。彼の、ユニークでセンセーショナルな回想録は、現代中国の、富を生むメカニズムの中で実際に起こっていたことを暴露した本だ。刊行以来、話題となっている。

一九四九年の共産主義革命のあと、デズモンド・シャムの祖父(蘇州の一族)は、かつての地主や富農が含まれる「黒五類」という卑しい階級に入れられた。それはシャム(沈)家が烙印を押され、貧困に陥ることを意味した。その結果、上海の貧しい教員の父母のもとに生まれたデズモンド(1968年生まれ)は、成長するにつれて、自分の人生をまったく違ったものにすると心に誓う。

デズモンドは、小学生の時、母の一族が住む香港へ移住、苦学(皇仁書院)するが、水泳選手として認められるなど、懸命な努力によってアメリカの大学(ウイスコンシン大学)へ留学、学位(経営学)を取得すると、中国に戻ってビジネスの世界に飛び込んだ。その時、中国経済は江沢民下の改革開放経済の中で急速な発展を遂げていた。ビジネスチャンスはいたるところにあった。そこで出会ったのが、やがて妻となる、教養豊かで彼と同様の野心を持ったホイットニー・デュアン(段偉紅)である。彼女は、男性が支配する中国社会で成功してみせると固く決意していた。その秘訣は権力機構や有力者とのコネ(グアンシー=関係性)だと言った。

デズモンドとホイットニーは、有能なチームを作り、「赤い貴族」の頂点に位置する人々(温家宝一族、特に温家宝夫人である張培莉、など)との結び付きに助けられて、一躍、中国の超資産階級の仲間入りをする。彼らは平安保険株の上海証券取引所への上場で大金をつかみ、その後北京首都国際空港に中国一の巨大な航空貨物施設(物流センター)を建設し、続いて、北京の高級街区ジェネシス(啓皓)北京の建設にかかわる。ここには安藤忠雄設計の美術館や北京でトップクラスのホテル「ブルガリ・ホテル」がある。華々しい成功を収めた彼らは、プライベートジェットで移動し、数百万ドルをビルへの投資や寄付に使い、高価なマンションや、車、美術品などを購入する。

ところが2012年以降、習近平体制下の腐敗一掃運動の広がり、それに伴う権力闘争に巻き込まれたか、二人の運命は決定的に分かれ、二度と引き返せなくなる。2017年、息子と一緒に海外に住んでいたデズモンドは、元の妻ホイットニーが、職場の同僚三人と共に姿を消した(官憲に拉致され拘束されたらしい)ことを知らされる。

この本はデズモンドの物語であり、自ら語ることのできないホイットニーの物語である。新中国の政治経済体制の中で実際に何が起こっていたかを当事者の眼で描いた稀有な記録。一代で財を成した新興企業家たちの前に何が待っているかを実例をもって描いた本である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ばたやん@かみがた

94
《ある中国人政商の興隆と没落》(1) a)香港・海外で学び'89天安門事件後に中国でのビジネスに関わるようになった著者。あるやり手の女性経営者ホイットニー(著者共々中国出生で中国名はあるが、読者が圧倒的に西側諸国に多いことを考慮して二人とも一貫して英語名で表記されます。)と出会ったことで人生が拓けます。彼女は温家宝総理(在職2003‐2013)の夫人・張培莉のお気に入りであり、中国の政官界と実業界が分かち難く結びつき合うことで生まれた「黄金郷」におけるビジネスの親分・子分の間柄でした。(1/5) 2023/09/11

鮫島英一

26
著者の体験を元に綴ったこの作品は、中国共産党の世界を描いている。内なる声が聞こえてこないあの国の姿を知るという意味で、赤い貴族の傍にいた著者の体験はそれだけでも貴重である。だが僕が思うに著作の重要性はそこではないと思う。面子を重視する御国柄もあって、あの国での対人関係や商業活動は分かりにくいのだ。漫画や小説でも描かれる幇(ほう)や秘密結社といった組織、南北でのコミュニケーション方法の差異が加わりと複雑怪奇としか言いようがない。人のありようは時代を超える。社会学的な面の理解を深める点から僕は高く評価する。2023/01/21

kan

25
中国ではコネとメンツが大切と聞いたことはあったが、これでもかというほど「関係(グワンシ)」と「給面子」の具体的な名前や出来事が出てきて、色々な意味で危険で複雑な一冊だった。現代中国の政治体制と著者のようなメガリッチのビジネスや金やコネがどんな風に絡み合うのか、そしてその消耗品のような人間関係がどんな風に打ち棄てられていくのか、非常に興味深く読んだ。2023/09/17

横浜中華街2024

14
1921年出版。政府有力者である温家宝元首相の妻に食い込み、「関係」(政府大物たちとのコネ)を駆使し中国で巨万の冨を築いた筆者とその妻の回顧録。有名な政府高官が実名で登場し、彼らとその親族がどのように蓄財したのかがインサイダーの視点で語られる。中国の特権階級である「赤い貴族」の都合や利権ですべてが運営され、法治主義がなく高官であっても簡単に粛清されてしまう有様が描かれている。以前読んだ「国際指名手配 私はプーチンに追われている」の中国インサイダー版のような感じで、独裁主義国家の恐ろしさが痛感できる一冊。2023/11/17

のれん

12
中華リスクを生き証人の視点から見る回顧録。 この物語で一番何より面白いのは著者が中国経済の急成長の最前線に乗り込み、その利益を得た本人であるということ。終章でも語るが、社会主義の利益率度外視で予算確保できる国有企業の需要と、資本社会の供給力を両方得たからこそ中国社会は急成長できた。それを歪な恩恵といってしまえばそうだが、その中華により保たれた世界経済もあるはず。 著者は子供時代に香港に移り住み西側の個人主義・資本主義感覚を身に着けたことで、その異常・矛盾性について理解した上でこの本を書いている。(1/3)2023/09/29

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