内容説明
柿埼先生に、手紙を書こうと思う。中学三年になる春、山坂百音は、かつて通っていた小学校の元教員・田児あやめにそう伝えた。その言葉通り百音は、三年半前に起きたできごとについて、五年三組の担任だった柿埼に向け当時の思い出を綴ってゆく。すべては彼の謎めいた提案から始まったのだ。「どうでしょう。今年一年、このクラスのみんなでゲームをしませんか?」――『ニンテイ』と名づけられた、柿埼の考案した奇妙なゲーム。それが彼らの未来を大きく左右することを、このときは誰も予想していなかった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
25
中学3年になる春、山坂百音は3年半前に起きたできごとについて5年3組の担任教師だった柿埼に向けて手紙という形で思い出を綴ってゆくミステリ。当時の思い出を百音と小学校の元教員・田児あやめの2人の視点から描いていく展開で、普通だったらまず実現しないのでは?とも感じる柿埼が生徒たちに提案した「ニンテイ」というゲーム。生徒たちの思惑も複雑に絡む不穏な雰囲気の中で当然起こりうる事態と、それが意外な形で転機を迎えてゆくあたりなかなか興味深かったです。田児先生の複雑な想いも気になるところですが、下巻でどうなるのか期待。2022/10/02
ほたる
9
初の創元文芸文庫。上巻は『ニンテイ』ゲームのなかでの小学生らしさを描いている。ちょっと調子に乗っただけでも目の敵にされてしまう、そんなクローズドなクラスで子供たちは毎日を過ごす。そんな環境を変えるために、柿埼先生はこのゲームを導入したのではなかろうかと。子供たちはすぐに夢中になって能力を使うし、それを通して学べることも多い。ただこれはやはり小学生、子どもの域を出ないというのは、やはり保護者の存在があるからなのだろう。「おおっ、いずれアヤメかカキツバタッ!」これを胸に下巻へ進んだ。2022/10/09
qoop
8
超能力バトルごっこを小学校のクラス運営に持ち込んで人間関係を刺激し、友好を育てようという教師の目論見。単純な性善説に立った教師の思惑は外れ、隙を突いてクラス掌握を目指す一派に応戦し深みにはまっていく生徒たち。不穏で純粋で傷ましくも清々しい物語。2022/11/10
ツバサ
7
上巻だが、掴みが弱い。学校で行うニンテイが上手くいかないだろうことが見え見え。2022/10/04
Gaooo
6
5年生のクラスで担任が始めた「ニンテイ(認定]」ゲーム。クラスメイト1人ひとりが「ある能力」を持つ設定で…。子どもたちに漂ういじめの気配とか、担任のあり過ぎる雰囲気とか。なんだか不穏なまま、いちおうの決着はありつつ、下巻へ2022/10/07