内容説明
打ち上げ直前のヘリ死亡事故によるクルー変更にもかかわらず、カズたちが見守るなか、アポロ18号は無事飛び立つ。最初の目的は軌道上のソ連偵察ステーション、アルマースだ。そこで思いがけないソ連宇宙飛行士との衝突が起こるものの、クルーは予定どおり月へ向かうことに。だが、そのころ地上ではヘリ事故が破壊工作の結果だと判明していた。そしてその容疑者は宇宙にいた! 衝撃の改変歴史SFスリラー 解説/中村融
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
18
後半になって、作者の書きたかったことがわかってきます。これはレトロフューチャーの逆、未来の今考えた、過去にこんな事がありえたかも、というイフの物語であり、その域から一歩も出ていないポリティカル・アクション・サスペンスなのだと。そして、新たな不思議が皆無であるので、SFともいえないと思う。米ソの冷戦時代、宇宙開発という新たな戦場で何が起きえたかというアメリカ視点の物語。面白いと思う人にとって良い冒険小説なのですけど、それだけ。なぜ早川書房がこれをSFとしたのか疑問。2022/10/08
天晴草紙
16
実際には飛ばなかったアポロ18号を巡る架空歴史SF。米ソ対立の中、アメリカの宇宙船になんとソ連の女性宇宙飛行士が途中で同乗することになる。目的地はソ連の月面無人探査車ルノホート。宇宙飛行士である著者の体験と関係者への膨大なリサーチによってリアルな描写にはわくわくした。ただ、銃の発射説明に1ページを費やすなど説明過多の部分がある。充分楽しめたけれどあっと驚くどんでん返しを期待した最後は予想の範囲に収まってあっけなく終わった感じがした。2022/09/28
アラム
13
ホンモノの宇宙飛行士が描くSFスリラー(?)未来的SFも好きだけど、機内にボタンがいっぱいの宇宙船ってのもまた好きなんだ。著者の経歴もあり、描写はかなり細かい。説明が長い部分もあり、好みは別れるようだが、これくらいなら私は全然OK。主人公の心理描写が薄く、キャラクターを愛するタイプの小説ではない。登場人物たちは米ソ冷戦の枠組みを語る小道具といった感じもするが、逆に心理について想像の余地があるので、総論的には面白かった。タイトルから想像するミステリー的要素は果たして機能しているのか疑問。2023/04/07
本の蟲
13
外交とは右手で握手し左手で殴り合う(あるいは棍棒、ナイフ、拳銃その他)なんて言葉もあるが、元宇宙飛行士が詳細に描く、宇宙開発をめぐる米ソのガチンコバトル。発射直前の宇宙飛行士事故死による、バックアップクルーからの繰り上がり。敵国資産への破壊活動と軍事衝突に死者。当然のように行われるお互いの軌道、行動、電波の監視。国防トップがめぐらす陰謀と指示。その指示のもと、呉越同舟の月面で行われる両国宇宙飛行士の協力、と同時に化かしあいと妨害工作。メディアの前では政治家同士が国際協力の重要性を謳いあげる。大人の喧嘩怖え2022/10/03
まぶぜたろう
10
作者が元宇宙飛行士で、ロケット発射シーンなど相当の迫力があり、続く展開も意外。これはすごいと思ったが、残念、そこだけでした。■アメリカが企てるミッションが姑息で汚い、ってメインプロットがそもそもダメな上に、主人公と思しき隻眼の男性は最後まで何もせず、代わりに悪役と思しき性格の悪い男が活躍するのでイライラしどおし。しかも悪役が何をしたかったのか結局わからない。フォーサイス流のディティールにこだわる筆致も冗長で、不要なシーンも多すぎ。何もせぬ主人公のロマンスなんて、いる?つまらぬ本を途中でやめる勇気(◯◯◯)2023/01/05