内容説明
廃城をさまよう天涯孤独の男。彼はそこで何と遭遇したのか(表題作)。ランドルフ・カーターは、二百年ぶりに発見された銀の鍵と共に消息を絶つ(「銀の鍵」)。冥(くら)き伝承の蟠(わだかま)る魔都アーカム。ギルマンの棲む屋根裏部屋で起きた、人智を超越した事件(「魔女屋敷で見た夢」)。唯一無二の光芒を放つ作品群から、おぞましくも読む者の心を掴んで離さぬ十五編を訳出。これがラヴクラフトの真髄だ――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
121
南條竹則さんの新訳によるラヴクラフト作品集の3冊目です。前2作(「インスマスの影」「狂気の山脈にて」)でラヴクラフト本来の異世界の物語はほとんど収められていて、今回はどちらかというと星に関する短編集のような感じであまり怖さなどはない感じを受けました。ただ東京創元社版よりも読みやすいせいもあるのかもしれません。2024/09/23
absinthe
119
ラヴクラフト作品集。かなり短い短編を寄せ集めた感じ。宇宙の大きさが、前世紀に信じられた大きさからかなり大きくなってきた時代。absintheは小さいころ、宇宙の大きさについて父親に読み聞かせしてもらい、その途方もない大きさに恐れおののいた記憶がある。そんな感じを思い出す。天体と天体の間の絶望的なまでの無の空間。星に取りつかれ吸い込まれそうな幻想的世界。アインシュタインの他、プランク、ハイゼンベルグ、ド・ジッターの名前が登場するとは。2024/09/12
sin
85
流行りの異世界転生はスイッチが切り替わるように死と云う安易な発想で成し遂げられているが、昔の米国の怪奇作家は夢と云う手段で一歩ずつ近づこうとしたようだ。それは彼と云うアウトサイダーが紡ぎ出した夢想の世界、彼の箱庭でもある夢見は移ろいやすい異世界転生だ。確信と懐疑が交互する冗長な解説めいた言い回しは彼の焦り、登場する鈍感な探求者の観察は読者の気付きへの配慮か?オカルトや科学によって人間には未知の領域が在ると証だてされることを誰よりも乞い願ったであろう彼に、夢の果てにのみ到達する禁断の光景は訪れただろうか?2022/10/09
夜長月🌙@読書会10周年
70
クトゥルー神話はその体系や構想が最初からあった訳ではなく、後々の研究から体系化されたものです。そのため短編の一つ一つだけ見ると大きな世界観の一部であり背景がわからないものが多いのですが、「アウトサイダー」と「家の中の絵」は一話完結で楽しめました。2024/08/06
『よ♪』
42
ラヴクラフト傑作選の三作目。見ていて不安になる表紙絵に、ついつい手が伸びてしまった。前二作に比してやや小粒な印象。著者の分身として書かれる"ランドルフ・カーター"は今回は「銀の鍵」「名状しがたいもの」の二篇に登場。アーカム、インスマスやミスカトニック大学というおなじみの地名に笑みがこぼれてしまう。クトゥルーの神話大系(モリミーみたいね)を感じることが出来た。読みにくさにも定評のあるクトゥルーだがあらためて前二作も再読したくなった。表題作「アウトサイダー」と「魔女の屋敷で見た夢」あたりの悍ましさがお薦めか。2023/04/02