内容説明
天才YA作家 氷室冴子 デビュー45周年
激しくも切ない「90’s青春グラフィティ」
「あたし、高知に行くまでは世間とうまくやってるいい子だったのよ。あれからずっと世間とずれっぱなしの感じがする」
大学進学で上京した杜崎拓は「ある事件」で疎遠になった高校時代の転校生・武藤里伽子が、地元大学への進学を蹴り東京に舞い戻った事を知る。
気まぐれな美少女に翻弄されながら、その孤独に耳を澄ました短い日々を回想する拓に、思いもかけない再会の機会が訪れる。
スタジオジブリの長編アニメーション「海がきこえる」の原作。
キャラクターデザイン近藤勝也氏のカラーイラストを34点収録。
トクマの特選!
イラスト 近藤勝也
〈目次〉
第一章 フェアウェルがいっぱい
第二章 マン
第三章 里伽子
第四章 里伽子ふたたび
第五章 やさしい夜
第六章 海がきこえる
あとがき
解説 酒井若菜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
179
『ぼくと里伽子の間には、なにもなかった…そしてそれは、やっぱり淋しいことだった。ぼくは里伽子が好きだった』。 1993年2月に刊行されアニメ化もされたこの作品。そこには高知の街で青春を生きた主人公・拓が、編入という形で目の前に現れた里伽子に翻弄される姿が描かれていました。雰囲気感抜群のイラストの数々に魅せられるこの作品。青春には時代は関係がないことを再確認させられるこの作品。眩しいくらいに青春を闊歩する拓や里伽子のあり様に「海がきこえる」という書名が鮮やかに浮かび上がる、時代を超えた素晴らしい作品でした。2024/05/05
ただいま蔵書整理中の18歳女子大生そっくりおじさん・寺
75
本書の復刊を、酒井若菜のTwitterで知った(解説が酒井さんである)。氷室冴子という名前を聞いて、1度も読んだ事が無いのに懐かしさで胸がいっぱいになった。クラスの真面目そうな女の子が、『なんて素敵にジャパネスク』(富田靖子主演でドラマ化されたなあ)を熱心に読んでいたのを思い出した。この小説がアニメ化されていた事も思い出したが、まさかスタジオジブリだったとは覚えていなかった。氷室さんは北海道生まれなのに、物語の舞台は高知で、主人公は見事な土佐弁である。ドラマチックな話ではないが、読むのをやめられなかった。2022/07/14
Willie the Wildcat
72
本屋で見かけて、懐かしさに負けて手に取った一冊。日本の学校に通っていたらどうだっただろうなぁ、と頭に浮かべながら読んだ当時を思い出す。大人の都合が齎す”理不尽さ”による心の葛藤。素直になれない自分へのもどかしさが、若気の至りでもあり、若さ故の特権。自他の痛みや周囲の温かみへの気づきが、少しずつ心を開いていく過程に、青春の美しさが滲んでいる。最後の”イヒヒ”がとてもイケてるなぁ。加えて、拓の母親は、若い頃に読んだ時と同じ印象で、Coolだ!2022/11/28
中玉ケビン砂糖
71
かくも長き不在。だが永遠が彼女を包み、そして彼女が永遠を纏う。2022/10/03
ハッシー
68
★★★★☆ ジブリ映画は見ていないが母校が舞台の作品だったので、前から読みたいと思っていた。中高一貫校の設定も土佐弁もリアルなので、没入感が凄かった。東京から転校してきた美少女に翻弄される主人公にはもどかしさを感じながらも、青春時代の思い出や、懐かしい故郷の街並みが思い浮かんで甘酸っぱい気持ちになった。物語を通して過去にタイムスリップできるという小説の醍醐味を満喫できた読書時間だった。タイトルは秀逸。2024/07/13