内容説明
天才YA作家 氷室冴子 デビュー45周年
激しくも切ない「90’s青春グラフィティ」
「あたし、高知に行くまでは世間とうまくやってるいい子だったのよ。あれからずっと世間とずれっぱなしの感じがする」
大学進学で上京した杜崎拓は「ある事件」で疎遠になった高校時代の転校生・武藤里伽子が、地元大学への進学を蹴り東京に舞い戻った事を知る。
気まぐれな美少女に翻弄されながら、その孤独に耳を澄ました短い日々を回想する拓に、思いもかけない再会の機会が訪れる。
スタジオジブリの長編アニメーション「海がきこえる」の原作。
キャラクターデザイン近藤勝也氏のカラーイラストを34点収録。
トクマの特選!
イラスト 近藤勝也
〈目次〉
第一章 フェアウェルがいっぱい
第二章 マン
第三章 里伽子
第四章 里伽子ふたたび
第五章 やさしい夜
第六章 海がきこえる
あとがき
解説 酒井若菜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
73
本書の復刊を、酒井若菜のTwitterで知った(解説が酒井さんである)。氷室冴子という名前を聞いて、1度も読んだ事が無いのに懐かしさで胸がいっぱいになった。クラスの真面目そうな女の子が、『なんて素敵にジャパネスク』(富田靖子主演でドラマ化されたなあ)を熱心に読んでいたのを思い出した。この小説がアニメ化されていた事も思い出したが、まさかスタジオジブリだったとは覚えていなかった。氷室さんは北海道生まれなのに、物語の舞台は高知で、主人公は見事な土佐弁である。ドラマチックな話ではないが、読むのをやめられなかった。2022/07/14
Willie the Wildcat
68
本屋で見かけて、懐かしさに負けて手に取った一冊。日本の学校に通っていたらどうだっただろうなぁ、と頭に浮かべながら読んだ当時を思い出す。大人の都合が齎す”理不尽さ”による心の葛藤。素直になれない自分へのもどかしさが、若気の至りでもあり、若さ故の特権。自他の痛みや周囲の温かみへの気づきが、少しずつ心を開いていく過程に、青春の美しさが滲んでいる。最後の”イヒヒ”がとてもイケてるなぁ。加えて、拓の母親は、若い頃に読んだ時と同じ印象で、Coolだ!2022/11/28
中玉ケビン砂糖
65
かくも長き不在。だが永遠が彼女を包み、そして彼女が永遠を纏う。2022/10/03
ジョゼ★マイペース出没@アイコン変更
62
スタジオジブリ作品「海がきこえる」を何年か前に観ました。 それから頭の片隅にふわふわとこの作品のことが残っていて、今回新装版の表紙も良かったので購入しました。 夏っぽいものを読みたいなと思って読み始めました。 近藤勝也さんの挿絵がとても素敵。 高知県が舞台になっていて、景色の描写も美しいです。 方言が好きなので、土佐弁にも惹かれました。 これは大人にこそ刺さる青春小説だなと思います。 氷室冴子さんの瑞々しい文章を読んでいると一気に昭和にタイムスリップ! 心の奥底でいつまでも色褪せない、激しくて切ない青春。2022/08/27
マホカンタ
40
ジブリのアニメもドラマも何となく知ってる程度だが、氷室作品をコバルト文庫で読んでいたこともあって新装版を書店で見かけて思わず買ってしまった。高知の中高一貫校にイレギュラーな時期に東京から転入してきた里伽子。親の都合で来た田舎で精一杯肩肘張って過ごす彼女に振り回される拓。知らない街で起こった出来事なのに、同世代であるせいかあの頃の空気感まで思い浮かび、読んでいるうちになぜかまるであの頃の私の周りで実際に起こった出来事のような気になってしまう。近藤勝也さんのイラストがノスタルジックでまたいいんだよ。Ⅱ読みます2023/09/18