内容説明
遥か昔、ペルー・アマゾンの奥地。白人に奴隷化された先住民イネ族の男が主人を殺し、仲間と逃げた。全滅を避けるため二手に分かれ、それきりに。密林で語り継がれた別れの記憶と再会の願い。「森で別れた仲間(ノモレ)に会いたい。友(ノモレ)を探してくれ」――。百年が過ぎ突如現れた未知の先住民と接触したイネ族のロメウは、彼らがノモレの子孫ではないかと感じ始める。人間の存在を問う圧巻の記録。(解説・東畑開人)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
piro
46
かつて侵略者の圧政から二手に分かれて逃げたアマゾン先住民の人々。百余年後、文明化を受け入れた片方の人々が、もう一方の末裔かもしれないイゾラド(文明社会と接していない先住民)との接触を持つエピソード。これがつい7-8年前の話という事に驚き。ノモレ(仲間)との理解を深めたいロメウの情熱を以てしても、なかなか親密な関係を築く事ができないもどかしさを感じますが、このぐらいの距離感が彼らにとっても良いのかも。ロメウと彼らの間にはノモレとしての信頼感が築かれた事は確かでしょう。とても興味深いノンフィクションでした。2022/12/25
アドソ
22
すごい迫力。リョサやカルペンティエルの小説の世界がそのまま語られている。というかラテンアメリカ文学自体、彼らの生活がそのまま描写されているだということがよくわかる。前作『ヤノマミ』に比べて作者自身の影を極力排した書き方が、ますます小説っぽさを醸し出しているが、これはノンフィクションなのだと時折思い出すたびに、取り返しのつかないほどねじれ曲がってしまったラテンアメリカの歴史に対して深いため息をつく。2025/03/14
海燕
17
現代に、文明と接触せずアマゾン奥地で生活している先住民を報道したNHK特集は、衝撃的だった。ペルー政府の役人でさえ、その「イゾラド」の実在を聞かされてもピンと来なかったという。イゾラドは、定住する先住民を殺めてもおり、政府は何とか彼らを「管理」したいと考えたのではないか。しかしそれは文明側の論理だ。イゾラドを知るために接触を試みれば、免疫の低い彼らが病原菌に接する機会も増すというジレンマ。政府側の窓口役を担う青年もまた先住民の出身で、心の葛藤を見てとれる。イゾラド、英語ではisolateが語源との由。2023/01/09
lily
15
ペルーの森の奥深く、ゴム農園で白人の強いる奴隷労働に嫌気が差した先住民が森から逃れる途中に二手に分かれ、生き別れた。それから百年。一方は文明化の恩恵を受けたイネ族のリーダーであるロメウが、最後のイゾラド(森の奥深くに住む文明化されていない先住民)にノモレ(仲間・友)の影を見て、彼らとつながり合っていく。事実は小説より奇なりを地で行くドラマチックなノンフィクション。既視感があったが、NHKの番組で取り上げられていたのを思い出した。『ヤノマミ』に続き、著者の行動力に恐れ入る。『ガリンペイロ』も読まなくては。2023/11/30
まふ
15
著者はNHKのディレクター。「イネ族」という先住民が100年前にゴム採集の労働者として奴隷状態で働かされていたが、ある日パトロンを殺して集団で密林を逃げたところ追及されて二手に分かれた、という伝承が一方の文明化された側のイネ族出身のロメウという若者を窓口としてもう一方側のイゾラド化したイネ族とされる家族との川岸を挟んだ面会につながる話の実話。ピダハンは先進文明に接しつつ興味を持たない生き方を選んだが、イネ族は文明化された側とイゾラドとして残った側に分かれた。いろいろな先住民がいることがわかる。*2020/10/12
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