内容説明
富む日本、惑う警察。
この国は、守る価値があるのか――。
1970年。大阪万博を控え、高度経済成長で沸き立つ日本。捜査一課と公安一課を対立させたある事件以降、袂を分かった刑事の高峰と公安の海老沢は、それぞれ理事官に出世し、国と市民を守ってきた。だが、かつてふたりの親友だった週刊誌編集長の息子の自殺をきっかけに、再び互いの線が交わっていく。単なる自殺と思われたが、独自に調べを進めるうち、日本全土を揺るがすスキャンダルの存在が、徐々に明るみに出る。尊重すべきは国家なのか、それとも名もなき個人なのか。「警察の正義」を巡り、苦悩してきた高峰と海老沢の答えは――。
戦後警察の光と闇を炙り出す一大叙事詩、待望の第三幕!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
95
刑事シリーズ3部作最終巻。良い意味でいつもの堂場氏との筆とは異なる気がする。俗にいう政治の季節の終焉の頃、登場人物達の55歳定年が見えて来た頃の事件が描かれている。その内の1人の息子の自死から展開する今回巻。戦前・戦中・戦後と生きたこの3人が駆け抜けた時期というのは、日本史上、自分達よりも激しい変化と混乱に相対してきた世代がいただろうかと1人の登場人物に語らせるが、確かに言われてみればそのとおりであり、珍しいこの時期の警察小説を3巻に亘り堪能させて頂いたのである。2023/05/06
KAZOO
95
堂場さんによる昭和の時代における刑事の生き方を書いた 三部作の最後は昭和45年です。友人の息子が自殺をしてそこで今までに出てきたやはり友人の公安にいる人物と会い主人公はその原因を一緒に調べ始めます。理事官となっている主人公はその自殺の裏にあるのが大きな事件のもととなっていることを突き止めます。むかしの公安の人物が政治家となっていてその黒幕ですが、以前からつながりのあった検事にその資料を渡します。最後にはよど号ハイジャック事件が起きます。次はないのでしょうね。平成の時代は政治家と記者の対決の三部作ですね。2023/02/04
えみ
65
ここに描かれていたのは凄い刑事なんかじゃない。苦心惨憺と刑事の道を歩んできた信念に生きる2人の男の姿である。『日本の警察』シリーズ第三弾。時は流れ、理事官になっていた捜査一課の高峰靖夫と公安一課の海老沢六郎。守るべきものは個人か国か。例え相容れなくても彼らには自分の「正義」に正直でいてほしい。戦中戦後と、昭和時代を警察官として生きてきた各々の「正義」への思いは、読了した今だからこそ心に深く染み入る。前作で決意の決別をした2人が友人の息子の訃報を切っ掛けに再会するが…。これぞ警察小説の原点、一貫した正義だ!2022/06/19
keiトモニ
41
解説の“骨太にして壮絶な昭和の警察史”とはよく言ったもの。昭和44年私は、TV中継の安田講堂攻防戦を下宿で見ていた。東大入試中止で受験地図は異様。だからこそ自死した小嶋和人の大学同級生、近現代政治史西田研究室岩尾の“この研究をすればするほど学生運動なんか無駄なものだとわかってくるんですよ”…が理解できるのだ。ほんと無駄だった。渋谷の酒場で安保議論し、喧嘩になり海老沢が仲裁した城東大経済学部3年畑本の“日本はもっと豊かになるべきで、共産主義の思想で遊んでいる場合じゃないんですよ”…当時の活動家よ、分ったか!2023/08/15
ゴルフ72
21
3部作の最後もスッキリしないものになってしまったが、これも致し方ない事か?海老沢&高峰が久しぶりに事件解決(友人小嶋の息子の自殺)へと共に動く。時代に翻弄されつつ汚職や軋轢の中での事件の真相が判明し始めるとともに重苦しい時間が流れ始める。多分スッキリとした終わりにはならないだろうと想像したが・・・やっぱり!さあ堂場さんこの続きはどうしますか?2022/09/21