内容説明
一九五二年、サンフランシスコ講和条約発効直前。東京都内の駐在所が爆破された。死者は二名。ひとりは駐在巡査、もうひとりの身元は不明。
刑事の高峰は、共産党過激派の関与を睨むが、秘密主義の公安から情報が流れず、捜査は難航する。高峰は、親友で公安に所属する海老沢に協力を仰ぎ、共同戦線を張って真相に近づこうとする。
だが、あくまで個人への犯罪として捜査する「捜査一課」に対し、事件を利用し過激派の瓦解を目論む「公安一課」という相反する立場が、ふたりの関係に影を落とす。
時代の乱れが、警察という「組織」の矛盾を生み出していく。
戦後警察の光と闇を炙り出す一大叙事詩、待望の第二幕!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
99
敗戦で何か変わったか。日本人の本質が一回の敗戦ぐらいで変わるとは思えない。そんな描き込みから始まる堂場氏の日本の警察大河シリーズ第二巻。過激派との闘いと共に特高から公安に変貌した時代。破防法が成立もした。そんな時代に警察と公安とマスコミに分かれても友情は貫けるのか。その結果迄が描かれ第二巻は終わる。個人的には特高から公安へ変遷しその動きに元々興味あり、興味深く読了。こうしたテーマに対し、堂場氏の登場人物への卓越した心情の描き込み筆が合間って惹き込まれていくのである。2023/04/23
KAZOO
95
シリーズの2作目で昭和の27年代ということで当時の政治状況などはまだまだ安定はしていませんでした。その中で刑事と特高出身の公安になった友人との物語りが語り継がれます。警察の中での刑事と公安の役割が戦前とはあまり変わっていないことも知らされます。当時は世情もまだまだ安定しているとは言えず陰謀めいた事件なども起きていたということでの中での主人公たちの役割が書かれています。2023/02/02
えみ
69
信じる正義の道を違える時、友という関係さえ失くしてしまうのか。戦時下にもみ消された殺人事件を協力しながら解決して数年、警視庁捜査一課の刑事として事件捜査に携わる高峰と公安に所属する海老沢の正義が遂に“対立”してしまうのか。動揺さえ切ない。駐在所爆破、警察官死亡…という事件に過激派の関与が疑われた事から「個人」と「国」を天秤にかけた敵対捜査が始まる。闇を抱えた正義が成立する意味とは?友情を裂いてまで従属する組織の価値とは?息が詰まりそうな緊張感に「変わるという事」の二面性を見た「日本の警察」シリーズ第二弾。2022/05/22
keiトモニ
37
戦後日本の混乱・動乱期、幼馴染・親友で映画芝居大好き3人組の反目・別れは果たして第3弾では雪解けとなるのか。楽しみだ。さて、東日ウィークリー記者小嶋“そうか、俺たちの存在が邪魔か” 警視庁捜査一課高峰刑事“邪魔だ、雑誌の連中は兎に角売るために記事を作る。誇大表現だろうが嘘だろうがなりふり構わず…”。誇大表現や虚報は雑誌だけでなくTVワイドショーやNHKクロ現も実績ありだ。クロ現はそれを過剰演出と称する。羽鳥MSの玉川は出演停止処分だ。“東日Wは真実を書くように小嶋が変えていくよ”…いくわけないじゃないか。2023/05/17
ゴルフ72
23
駐在所爆破事件から捜査一課VS公安の腹の探り合い、騙しあいそんな中高峰と海老沢の友情にもどこかぎくしゃくしたものになっていく中、それぞれが本当の自分の気持ちは良い世の中にしたいという思いは変わら無い。まだまだ闇の部分が分からないまま・・・次の作品に期待しましょう。2022/09/03