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内容説明
孤独な放浪のさなかに訪ねた草砂原の楼閣。そこで巻き込まれた事件の顛末を語る表題作。無頼漢として知られるフランスの詩人ヴィヨンの荒んだ一夜を描く「その夜の宿」。見知らぬ屋敷に閉じ込められた男が思いもよらない結末を迎える「マレトロワの殿の扉」。芸術という宿命に取り憑かれた旅芸人を主人公にした「天意とギター」の4篇。『ジーキル博士とハイド氏』『宝島』などの名作を生み出す作家の筆が冴える傑作短篇集第2弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
43
新アラビア夜話の第二部。孤独を愛する偏奇者2人の再会と騎士道に則った戦いの表題作、酔いどれ詩人ヴィヨンの冬の一夜「その夜の宿」、追い詰められた若き騎士の前に開けられた扉「マレトロワの殿の扉」、零落した流し芸人夫妻の窮地「天意とギター」を収録。海辺の寒村で追い詰められた銀行家をかくまう旧友に手を貸す主人公、そして銀行家の令嬢を巡る奇妙な恋愛関係、そして最後の決戦を描く表題作、そして敵から逃れたものの、逃げ込んだ先でも命をかける羽目になった若き騎士の一夜を描いた「マレトロワ~」に魅せられました。おススメ! 2022/06/23
paluko
13
「臨海楼綺譚」なぜかシャーロック・ホームズを連想。イタリア人が物凄く執念深い人種に描かれているからだろうか。「その夜の宿」当時(初出1877年)のヴィヨン研究の進展が背景にあるとのこと。詩人ヴィヨンのブレブレの行動に何とも言えない人間のリアリティを感じる。「マレトロワの殿の扉」結果オーライロマンス。扉に特別な魔力があるのかと思ったら…。「天意とギター」マンの『マリオと魔術師』『ヴェニスに死す』等に出てくる旅回り芸人の、本人たち視点の物語といった趣。2022/06/29
歩月るな
8
南條訳を定期的に摂取するの巻。『爆弾魔』の単行本が出ていたので、文庫化でもしたのかと思ったら、実は訳されていなかった「第二部」がこちらで揃う事に。複雑な主義と心情、信条をぶつけ合うやり取りはまさに一種のコンゲームと言っても良いレベルで、鮮やかなる陥穽、のようなものである。ちょっとヤバい感じの人々が、何をやらかすのか解らないという意味でのヒヤヒヤ感はあるので、さすがの天才的な筆致を味わうのにはやはりうってつけの絢爛な訳文である。後編三話が仏蘭西物であることもあってか、ある意味では時勢を映してもいる、のかも。2022/07/05
Vincent
7
新アラビア夜話の第2部。フロリゼル王子は登場しませんが4つの短編はそれぞれ味わい深くてやはり良い。表題作は作者らしい冒険とサスペンスにあふれた秀作。人生の機微を感じさせる最後の短編もしびれましたよ2022/07/17
qoop
6
著者初期の短編。サスペンスフルな冒険小説の表題作、スリリングな〈その夜の宿〉〈マレトロワの殿の扉〉、音楽家の生き様をスケッチした〈天意とギター〉の四作。最後の作品は芸術的アナキズムを書いているようで現代にも通じるテーマと感じ、印象に残る。しかし、前作同様やはり若書きの間は否めず。翻訳に救われている部分も多いのではないか。2022/08/28