内容説明
桜を見せたい夫、夫の志を見たかった妻!
大川堤の桜のつぼみが、ほころびる様子もなく寒風に耐えていた春の初め、浅草諏訪町にある独庵の診療所に懐かしい男が顔を見せた。
長崎遊学中ともに勉学に励んだ佐田利良だった。早速、診察室に招じ入れると、佐田が土産だと言って差し出したのは、江戸はもとより、日の本でも珍しい葡萄酒だった。故郷の甲州で自ら作ったものだという。
眼科を志していた佐田は、あれこれ事情があって、今は、日本橋で薬種屋を営んでいるとか。葡萄酒の製造も、あくまで薬として売り出すつもりらしい。
しかし、佐田が独庵を訪ねたわけは、もとより葡萄酒を進呈するためではなかった。佐田の内儀・千代は予てより江戸患い(脚気)に苦しみ、その道の名医・道寺の診立てでは、もはや先が長くない。佐田の願いは、この春の桜をひと目見せてやることだったが、白底翳(白内障)で、それも覚束ない。
佐田の来訪は、独庵に江戸きっての眼医者・破風元代に口をきいてもらえないか、ということだった。快諾した独庵は面識のない破風が受けざるを得ないよう策を講じ、佐田を連れて面談を求めたが……。
2021年啓文堂書店時代小説文庫大賞第1位受賞作、待望の書き下ろし第3弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
toshi
8
シリーズ前作を読んでいないから細かな背景は分からないが、主人公は町医者だけど剣術の腕もなかなかと言う、この手のシリーズではお馴染みのスーパーマン。その腕を生かして滅多やたらに悪人を切り倒すということはなく、ここ一番の時にさりげなくやっつけるだけ。どういう関係なのか良く分からないけれど何かと独庵の手伝いをする久米吉が、情報収集のため甘鯛に行くと何故かいつの都合よく話が進むところがちょっとご都合主義だけど、それが無いと物語が進まない。このシリーズ、なかなか読み応えがあって楽しく読めるから、長寿になるかも。2022/05/23
好奇心
0
今回の独庵先生のお助け事案は徳川時代の藩に起った、世継ぎ問題への肩入れ事件、創成期は嗣子の存在しない藩は、藩改易すなわち取り潰しのルールであったが、これでは多くの藩主一族・家臣が生活の糧を失い、社会不安の増長し幕府への謀反への懸念を考慮し、末期養子を認め、藩主の死前までに、次代の藩主が決まっていれば藩存続が認められる、判元見届・大目付の検分が必要という、新しい知識が得られた 藩の危急存亡事件、興味深く読ませて貰った2022/07/07
いえのぶ
0
仙台藩の藩医だが、江戸の町医者をしている独庵が主人公。医学舎で学ぶ若い医者の昇進とそれぞれの専門への進路、眼科医が葡萄酒作りに、見習い医者の誤診、大名の家督相続の4作。医者に対する厳しい言葉や姿勢は著者の職業からだろう。悪党とはいえ、医者が簡単に切り殺してしまうのもちょっと、、2022/06/10
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