内容説明
毀すこと、それがばさら――。六波羅探題を攻め滅ぼした足利高氏(のち尊氏)と、政を自らつかさどらんとする後醍醐帝との暗闘が風雲急を告げる中、「ばさら大名」佐々木道誉には、毀したいものがあった。数々の狼藉を働きつつ、時代を、そして尊氏の心中を読む道誉。帝が二人立つ混迷の世で、尊氏の天下獲りを支えながらも、決して同心を口にしようとはしなかったが……。
【目次】
第一章 激流
第二章 京より遠く
第三章 いかなる旗のもとに
第四章 征夷大将軍
第五章 猿の皮
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
如水
23
佐々木道誉…鎌倉末期から室町初期、南北朝時代に活躍した所謂「バサラ大名」です。バサラと聞くと、ヒャッハー!!な事を想像します💦が、そんな所は皆無に等しく(見方によればそうでも無い、か?)幽玄と言うか艶やかと言うか…そんな雰囲気満載の道誉です。後、商業感覚が突出している!(実は他の作家さんも其処は強調してる)所にも注目。道誉が治めた「近江南部」の重要性が分かります(戦国時代迄続く重要地だと思ってます)。話は高氏が六波羅探題に攻め込んだ所から、なので南北朝時代を良く知るにはオススメの本?かもしれません2022/07/11
Francis
12
大河ドラマ「太平記」で陣内孝則さんがカッコ良く演じた佐々木道誉公のファンなので購入。タイトルの通り道誉が主役なのだが、足利尊氏も同じくらい登場し、事実上「尊氏と道誉」と言うべき小説になっている。ハードボイルド小説家の北方謙三さんらしく、権力闘争の有様がひしひしと伝わってきて、大河ドラマとも違った面白さがある。それにしてもやっぱり佐々木道誉公は大変偉かったのだなあ、と同じ佐々木さんとして改めて道誉公を誇りに思うのでした。2022/03/13
TheWho
10
太平記の梟雄でバサラ大名と呼ばれた日本史上隠れた英雄である佐々木道誉の一代記。鎌倉幕府滅亡への戦いから建武の親政の瓦解、、南北朝の騒乱時の混沌とした時代に、狼藉とも思われる破天荒な振る舞いをする中で、時代の流れを見極める冷徹な視点を持つ稀有な武将として、また魅力溢れる人間として、佐々木道誉を描ききっている。上巻では、南北朝の騒乱の序章から足利政権初期の混迷の中で佐々木道誉の怪しげで奇妙な人物ながらも重要な人物としての存在感に圧倒された。下巻での展開が楽しみです。2023/05/26
フク
10
#読了 佐々木道誉と足利尊氏の視線を交えて展開する。両者の意地の張り合いが楽しい。 kindle2022/11/30
coldsurgeon
7
佐々木道誉という武将の室町幕府成立前夜の活躍の姿を描く。道誉、足利尊氏、楠木正成の建武の新政にかけて想いの違い、後醍醐天皇へのそれぞれの想いの違いが、南北朝の混乱を生み出したのかもしれない。道誉がばさら大名と呼ばれるゆえんは、その姿の奇抜さだけでなく、規制の体制を壊すことに自らの生き方の幹を見出したことか。室町幕府成立初期の関与は、後半に描かれるのだろうか。2022/11/29