内容説明
NORAD(ノーラッド、北米航空宇宙防衛司令部)とは、アメリカとカナダの領空と防空識別圏を守っている司令部であり、両国が共同で運営している軍事組織である。本書ではこのノーラッドを通してカナダの対米同盟を振り返り、大国との同盟における「庇護に対する自衛」や「支配・依存関係」がどの程度当てはまるのかを検証する。
目次
北米とノーラッド基地の地図
略語表
序章 ノーラッドとは何か
先行研究と問題の所在
各章の構成
国際政治システム、同盟関係、ノーラッド
冷戦とは何だったか?
カナダの「庇護に対する自衛」論とノーラッド
米加「支配・依存」関係論とノーラッド
第1章 ディーフェンベーカー政権とノーラッドの創設
正式発表前の状況
一九五七年政権交代とノーラッド創設問題の発生
加米交渉とカナダ国内の反応
一九五八年ノーラッド協定とカナダの承認
CF105アロー廃棄事件
一九六二年キューバミサイル危機、ノーラッド、米加同盟
核弾頭装備事件、ノーラッドと加総選挙
まとめ─ディーフェンベーカーとノーラッド
第2章 ピアソン政権とノーラッドの制度化
カナダ軍核装備とカナダ国内米軍の核配備
ケネディのノーラッド本部訪問
一九六五年ノーラッド核兵器秘密協定
ヴェトナム戦争下でのカナダとノーラッド
初めてのノーラッド協定更新に向けて
まとめ─ピアソン政権とノーラッド
第3章 トルドー政権とノーラッドの変化
カナダのNATO=ノーラッド政策の見直し
米国ABMシステムとカナダ
一九七三年のノーラッド二年間延長
第四次中東戦争の影響
一九七五年のノーラッド改定
一九七〇年代北米防空体制の整備
コスモス九五四号事件と加米関係
一九八〇年のノーラッド更新
一九八一年ノーラッド改定と北米防空マスタープラン
まとめ─トルドーとNORADの二律背反的な関係
第4章 マルルーニー政権とノーラッドの冷戦終焉への対応
「北米防空最新化協定」とノーラッド
SDIとノーラッドの関係
一九八六年のノーラッド更新
米宇宙軍と米防空構想
冷戦の終焉と湾岸戦争
一九九一年ノーラッド改定とGPALS
まとめ─マルルーニー、冷戦終焉、そしてノーラッド
第5章 クレティエン=マーティン政権とノーラッドの漂流?
緊縮財政下でのカナダ国防政策模索
ノーラッド最大の危機となった九五年ケベック州民投票
一九九六年のノーラッド改定
クリントンの国家ミサイル防衛とカナダ
国家ミサイル防衛課題回避と二〇〇〇年ノーラッド更新
ブッシュのミサイル防衛構想と九・一一事件
アフガン戦争とカナダ
クレティエン、イラク戦争、そしてノーラッド
まとめ─クレティエンとノーラッドの危機
マーティンと二〇〇四年ノーラッド修正
マーティン・ジュニアによるミサイル防衛不参加発表
まとめ─マーティン・ジュニアとノーラッド同盟
第6章 ハーパーとノーラッドの恒久化
二〇〇六年ノーラッド改訂問題
二〇〇六年改定に関するカナダ下院での議論
カナダに対する米国の反応
ノーラッド設立五〇周年記念とグルジア紛争
ピーターソン空軍基地への本部移設
加米二つの選挙とノーラッド
ミサイル防衛、ロシア機接近、ノーラッド
北朝鮮ミサイル発射とノーラッド評価
ロシア機接近と米ロ加共同訓練
F35ライトニングII戦闘機購入騒動
オバマ=ハーパー会談、リビア攻撃
東日本大震災とノーラッドの支援
二〇一一年カナダ総選挙とノーラッド
米ロ加による「ヴィジラント・イーグル」演習
ほか