内容説明
日本の国家戦略はいかにあるべきか――。政治的リアリズムの立場から戦後の経済重視・軽武装路線を「吉田ドクトリン」と定義づけ、軍事的リアリストへの批判を展開した戦略論の名著。『現代と戦略』第一部に岡崎久彦による反論、永井・岡崎対論「何が戦略的リアリズムか」を併録し、白熱の論争を再現する。文藝春秋読者賞受賞。〈解説〉中本義彦
【目次】
Ⅰ 防衛論争の座標軸
Ⅱ 安全保障と国民経済――吉田ドクトリンは永遠なり
Ⅲ ソ連の脅威――軍事バランスという共同幻想
Ⅳ 有 事――日米運命共同体の幻想がくずれるとき
Ⅴ 戦略的思考――死こそ赤への近道
Ⅵ 摩擦と危機管理
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永井陽之助氏への〝反論〟 岡崎久彦
対論・何が戦略的リアリズムか 永井陽之助×岡崎久彦
解説 誤読を避けるために 中本義彦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Francis
14
戦前の非マルクス主義社会主義者河合栄治郎から猪木正道へと続く思想的流れを汲む国際政治学者の著書。冷戦下でのソ連の軍事的脅威なるものが誇張されており、米国の右派が自分たちの主張を正当化するためにあえてそうしていた、とする著者の言葉は鋭い。ウクライナ侵略戦争でプーチン政権下のロシア軍が意外と苦戦しているが、やはり旧ソ連と同様にロシア軍やロシアの国力を過大評価していたのかな、とも思う。巻末の岡崎久彦氏との対談で岡崎氏は論点をはぐらかそうとして失敗して必死にごまかそうとしているように感じた。2022/11/27
おせきはん
8
かなり前にオリジナル版を読んだことがあるものの、新編を見かけたので読みました。冷戦期の米国、ソ連(当時)の戦略が主要テーマですが、相手の能力をお互いに過大評価していたことは、軍事予算の確保・充実のために必要だったとは言え、まさしく政治的な考え方ですね。吉田「ドクトリン」と呼ぶかはともかく、第二次世界大戦後の日本が経済重視・軽武装路線により高度経済成長を実現できたことは確かだと思います。2018/06/23
ヴァン
4
前に読んでいてもれた本。著者・永井陽之助は、今読んでみても古くない。冷戦真っ最中の日本の高度成長が軽武装の『吉田ドクトリン』にあったことを平易に語った古典的論述。これを読むと、気まぐれで突飛なことをいう米国大統領や、遥か先まで自身の権力把握に固執するロシアのトップのような人物が、世界に跳梁することが悲劇に思えてくる。
K.
3
研究ではつまみ食い的に読むことが多いので、ちゃんと通しで本を読んだのは久しぶりだった。この本の主張を一言でまとめるならば、「戦略の分析や立案に当たっては、単純かつ静的な軍事バランス分析のみに頼ってはならず、バランスの動的側面や、国内の経済構造や政治体制も検討に入れるべきで、故に合理的な戦略理論よりも「吉田ドクトリン」のような妥協の産物の方が真に戦略的である」ということだろう。首肯し難い点もあったが、戦略的な思考の枠を広げてくれる本だった。2026/02/25
SAKU
2
「政治的リアリスト」を自認する政治学者の著者による戦略論。書かれたのは冷戦真っ只中で、本文中もロシアでなく、ソ連と書かれている。著者は、いわゆる親米保守主義とは少し違う立場を示し、ソ連の脅威による安易な軍拡に反対する。また、本書中では戦略論のバイブル『戦争論』をところどころ引用し、その誤読を戒めている。興味深いのは、本書で批判している元外務官僚の岡崎久彦と巻末で対談しているところ。お互いに明確に敵と認識しながらも、落ち着いた大人の戦いをしていた。この国の行き先を考えるなら、もっと戦略論を学ぶしかない。2023/10/19




