内容説明
コーンウォールの湖畔荘で起きた赤ん坊消失事件。屋敷の現在の持ち主は、消えた赤ん坊の姉でロンドン在住の高名なミステリ作家、アリス・エダヴェインだった。当時、湖畔荘には三人の娘がいて、消えた赤ん坊はまだ乳飲み子で待望の男の子だったのだ。刑事セイディはなんとしてもこの事件の謎を解こうと、作家に連絡を取る。1910年代、30年代、2000年代、それぞれの時代の秘密を炙り出すモートンの見事な手法。複雑に絡み合う愛と悲しみがもたらすものは? そして、最後の最後で読者を驚かすのは、偶然か、必然か? モートン・ミステリの傑作。/解説=大矢博子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
333
★★★★★ 流石の面白さ。特にエンディングのほっこり度は前作『秘密』を上回っていて、幸せな読書を希望する人には超おすすめ。 ただ、作中で何度も使われる「偶然」が過ぎる点については好みが分かれるかも。現在の母親失踪事件ももう少し深掘りして欲しかった。 しかし、重厚で中身の濃い物語なので好きなのは間違いない。特にクリスティを彷彿とさせる老作家となったアリスは偏屈さを含めて好きなキャラ。2023/12/21
りょうすけ
34
現在と過去を行ったり来たりするこの手法は『俺ではない炎上』を想起させる。違う点は、これだとわかるトリックがなかった所。最後のハッピーエンドは良かった。2023/05/01
CCC
12
5年前に読んだ記憶が消し飛んでいるのに気づいて凹む。しかしもうここまで来たら最後まで行くしかないという段階だったので読み通した。それまであった不穏さみたいなものが、最後に解消されるような形になっている。きっとその解消感で記憶を手放してしまったに違いない(言い訳)。自分は作家としてのキャラが面白かったからずっとアリスの物語として読もうとしていたが、着地点を見るとやはり家族の物語という印象に落ち着いた。主役がいるとしたらむしろ母親だったかも。背景に歴史的要素を織り交ぜながらも、人間関係が濃密な作品。2023/08/30
Ayako H
12
図書館から。ケイト・モートンの作品は過去が絡んだゴシックミステリーとでもいいましょうか。これも過去が絡みに絡んで、しかも現代の状況も絡めた展開となっている。最初は誰が誰だか…と思っていたのにだんだん登場人物が私の中で個人として動き出し、そうなると俄然話が面白くなり。不幸な事は色々あれどもラストはハッピーエンドでした。面白かった。2022/10/07
ちゃあぼう
10
下巻では現在の主人公であるセイディと事件発生当時の主人公にあたるアリスが協力して過去の事件の真相に迫っていく様子が描かれている。事件の真相についてはセイディとアリスの出会いが(両者が引き寄せあったことによる偶然から)両者にとって必然的な真相として締めくくられたが、決して悪くないストーリー展開だと思えた。ケイトモートンの作風の特徴から登場人物の一覧が掲載されていないので、これから読まれる方は、ご自分で簡単な相関図を書きながら読むと随分と読みやすくなると思います。2021/12/04