内容説明
江戸深川の飯屋〈江戸一〉は小体な店だが、味の旨さと店主の吉六特製のタレが人気で大評判。長男の吉平は店を手伝いながら、いつか自分も料理人になろうと心に秘めていた。
だがある夜、店に押し入ってきた何者かに父親は殺され、秘伝のタレの入った瓶も盗まれてしまう。吉六の死で一家は離散。吉平は柳橋の料理茶屋に拾われ、奉公人として料理の腕を磨いていく。
だが、思いは父の仇を見つけること。吉平の身を案じる南町奉行所同心・矢部一之進は科人を捕らえるべく、探索に奔走していた。
一向に手がかりのないまま五年の年季が明け、出商いを始めた吉平。ある日〈江戸一〉の味に似ているという料理茶屋の評判を聞き、出かけた吉平がそこで見たものは?書下ろし長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひ ろ
24
★★★★☆ ああ、やっぱりこの人の小説は面白い。せつないしワクワクするし温かいし。 次も行きまっせ。2022/12/11
ひさか
12
2021年8月コスミック文庫刊。書き下ろし。シリーズ1作目。亡き父の飯屋の江戸一の再興を目指して振売りを始めた吉平は、仇らしい料理人に行き当たる。一家離散の憂き目にあった吉平の料理人としての修行時代をストーリーの半分、海苔巻や稲荷巻きを振売りするところを残り半分で書いてある。町人に仇討ちはできない件や仇の探索、そして料理の工夫とうまく織り混ぜて書いてあり、気楽に楽しめた。2021/10/09