内容説明
江戸の町に、世の理不尽と戦う「情報屋」がいた! その名は、藤岡屋由蔵――。神田旅籠町の一角で、素麺箱に古本を並べ、商売をするこの男が、古本販売を隠れ蓑に売っていたのは、裏が取れた噂や風聞の類。それを買いに来るのは、喉から手が出るほど“情報”がほしい各藩の留守居役や奉行所の役人だった。由蔵が己の仕事として心に刻み込んでいたのは、真実を見極め、記すこと。筆一本で戦う由蔵のもとに、ある日、幕府天文方の役人が逃げ込んで来る。その役人は、日の本を震撼させたシーボルト事件に絡んでいた。しかしその騒動のとばっちりで、由蔵の手下が命を落としてしまう。手下の理不尽な死を許すことができない由蔵は、真実を暴くため、動き始めるのだが……。天下を揺るがす陰謀に、“情報”で挑んだ男を活き活きと描く傑作歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
183
『噂に惑わされ、踊らされ、噂が噂でなくなっていく。どうやって噓を見破る?それは真実と違うと、どう叫べばいい?』まるっきり今、この時代にも通じる気持ちがあった。読売やかわら版とは違う。裏が取れた噂だけを売る男・由蔵の物語。自分の身代わりに殺された清次の仇を討つために動くのだが、どんどん話が大きくなって《シーボルト事件》に繋がるとは・・真相の裏には国の為、学問の為とお題目は立派だが嫉妬や人間不信が露呈して、なかなか面白く梶さんが読ませてくれた。2021/08/25
パトラッシュ
132
ネットもマスコミもない江戸時代だからこそ、情報屋は重宝された。依頼人が欲しい情報を種々雑多な噂や風聞の中から取り出し、信頼性を精査した上で流してくれる有能な情報屋の由蔵は庶民より武士にとって不可欠な存在だ。そのため否応なく町奉行所の情報網に組み込まれ、シーボルト事件をめぐる暗闘に巻き込まれていくドラマが面白い。身内に犠牲者が出た由蔵は真相解明へ意地になるが、その果てに見えたのは誰も知らない事実を自分だけが知ろうとした学者の歪んだ欲望だった。松本清張賞の受賞者らしい、清張風の時代ミステリの味わいを堪能した。2021/11/25
初美マリン
115
私見を交えず事実だけを書き記す、それを使うのは本人次第。シーボルトの地図事件を追うのだが、権力を持っている人たちがうごめきあい、主人公や取り巻きをもっとスッキリ、スカッとしてほしかった2022/02/28
のぶ
100
とても興味深い話だった。主人公の藤岡屋由蔵は、軒下にムシロを敷いただけの店で箱に古本を並べ商売をしていたが、古本販売を隠れ蓑に売っていたのは、裏が取れた噂や風聞の類。そんな筆一本で戦う由蔵のもとに、幕府天文方の役人が逃げ込んで来る。伊能忠敬の大日本沿海輿地全図がシーボルトによって国外に持ち出された、いわゆるシーボルト事件の裏側を描いている。真相を暴くために奔走する由蔵の姿が読んでいて面白かった。シーボルト事件は知っていたが、由蔵は実在の人物だったのだろうか?思った以上にスケールの大きな作品だった。2021/08/15
タイ子
96
「藤岡屋由蔵」という江戸の情報屋の物語。瓦版の様に庶民が楽しむために事を派手に書いて買わせるのではなく、由蔵は江戸のあらゆる情報の事実のみを調べ各藩の留守居役、奉行所の役人に売っている。由蔵の過去に忌まわしい思い出しか残っていない嘘は今の由蔵に事実という情報の種を集めさせている。古本販売を隠れ蓑に情報を売っている由蔵の元に一人の天文方の役人が助けを求めてやってくる。そこから物語は歴史的なシーボルト事件へと繋がっていくのである。噂に惑わされず事実のみを追う。まさに今の情報社会に一石を投じる作品かもしれない。2021/12/07
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