内容説明
「ふしぎなことに,なにかがわたしのなかで息づきはじめました」──孤児の身から荒涼館の一員となり,世話好きな性格で誰からも頼られるエスター.彼女はなぜ見ず知らずの准男爵夫人の姿に衝撃を受けたのか.ロンドンでは,リチャードが終わりの見えない裁判に期待を寄せ,身元不明の代書人の死にまつわる捜査も広がりを見せる.(全四冊)
目次
凡 例┴第一巻のあらすじ┴主な登場人物┴地 図┴第 十七 章 エスターの物語┴第 十八 章 レディー・デッドロック┴第 十九 章 そこから動け!┴第 二十 章 新しい下宿人┴第二十一章 スモールウィード一家┴第二十二章 バケット氏┴第二十三章 エスターの物語┴第二十四章 上 訴┴第二十五章 スナグズビー夫人は何もかもお見通し┴第二十六章 射撃の名手たち┴第二十七章 元軍人は一人ならず┴第二十八章 鉄工所の親方┴第二十九章 若い男┴第 三十 章 エスターの物語┴第三十一章 看護する者とされる者┴第三十二章 約束の時間┴【全巻の構成】┴第一 ― 十六章…………………(一)┴第十七 ― 三十二章…………本文庫(二)┴第三十三― 四十九章…………………(三)┴第五十 ― 六十七章…………………(四)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
81
いよいよというか、ようやくというか、本巻に至ってストーリーが動き出してきた。現代の作家なら、半分ほどにまとめるかも。冗長? じゃなく、ディケンズ節炸裂。全体の中でこの場面はどう位置付けられるのか見えなくていらいらすることも。が、そもそも人生なんて、先が見えないだけじゃなく、今という今が不透明で不安だったりするもの。ディケンズの技量に任せ、場面ごとの叙述を楽しめばいい。ゴーゴリやゴンチャロフらを彷彿させる(どちかがどちらに影響したというのではない)諧謔味のある滑稽な表現が卓抜。2020/02/26
momogaga
50
謎が少しずつ解かれて来ています。娯楽小説なんですが、社会性も含んでおり、19世紀の英国の歴史を学び直すきっかけにもなりました。後半も楽しみます。2023/05/12
道楽モン
33
物語が動き出せば、あとはディケンズに身を委ねるのみ。初版は連載モノだったということで、当時のロンドンでの紳士淑女同様に次なる展開にワクワクし、多数の登場人物によって織りなす人間関係の謎がひとつずつ解き明かされてゆく様を愉しむのだ。主人公エスターの出生の秘密のヒントが提示され、巻末では流行病に倒れる。遺産相続予定のリチャードは、まったくのダメ人間であることが露呈する。裁判をとりまく周囲の人々は、自然発火による孤独死など次々に死んでゆく。エスターに懸想するガッピーや、篤志家のジャーンダイスなどキャラ濃いな。2024/02/18
みつ
29
冒頭、登場人物表と地図に加えて前巻のあらすじが掲載されている。複雑を極めた物語の読み手としてはありがたい。非常に大勢の登場人物はさらにその特徴を明らかにし「子供」スキンポールやリチャードの救い難さも一層印象的に。チャドバンドのようないかにも怪しげな人物も登場する。エスターの語る物語では、キャディーの結婚の祝福や新しいメイドであるチャーリーとの交流など、一服の清涼剤の趣き。病をうつされたエスターの今後が心配。一方ガッピーがもたらした情報がレディー・レッドロックに与えた衝撃(p412)も次巻への期待を増す。2023/12/21
Ryuko
27
1巻の伏線を少しずつ回収しつつ、新たな謎もふりまかれる2巻。ここで半分。個人的にはエスターの出生の秘密や求婚者たちとの行く末よりも、浮浪児ジョーがどうなってしまうのかが気になる。ディケンズは罪のない浮浪児をそんなに惨い目に会わせることはしないと信じたいがとても心配。次巻へ。2020/01/22