内容説明
俳句では、たった十七音しか使えない。だから俳人は劇薬を扱う化学者の注意深さでもって、言葉の一つ一つを吟味し、どう組み合わせれば最大の効果を与えるかを戦略的に思考する。俳人とは疑りぶかい言葉の化学者なのである――。俳諧を芸術へと高めた芭蕉以降の数々の名句を味わいながら、その根底にはつねに、常識への批評精神にもとづく新しい価値の創造があったことを明らかにする。俳壇の俊英による創見に満ちた俳句論。
著者略歴
1980年、静岡県浜松市生まれ。早稲田大学教育学研究科博士前期課程修了。専門は芭蕉の発句表現。俳句実作は藤田湘子に師事。2004年、第19回俳句研究賞受賞。現在、俳句結社「鷹」編集長。読売新聞朝刊「KODOMO俳句」選者。早稲田大学講師。句集に『未踏』(第1回田中裕明賞)、『寒林』、評論集に『凜然たる青春』(第22回俳人協会評論新人賞)、『どれがほんと? 万太郎俳句の虚と実』、鑑賞書に『芭蕉の一句』『蕉門の一句』『名句徹底鑑賞ドリル』など。2017年度、Eテレ「NHK俳句」選者。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
15
俳句も短歌に押され気味で岐路に立たされているのだと思う。そのことを踏まえて「究極の俳句」という極北の文学性を求めるのか、あるいは短歌のように一般へと開放していくのか、このへんは難しい問題で、個人の思いもあるだろうから一概には言えないのだが、このスタイルは今は流行らないのだと思ってしまった。結局芭蕉の俳句が一番で、そこに中央集権的な権力機構が働いてしまうのではないか?それは文語というものを最後まで疑い得ない著者の態度であろう。そこのところがわかりにくいというか、テーマ性を持てということはいいと思うのだが。2022/12/23
koke
7
プレバトやNHK俳句を見ていて俳句って面白いなと感じていて、それで手に取った本です。俳句鑑賞の視点や姿勢を知るのに、初心者としては面白く読めました。詳しくないのでこの界隈でどれぐらい挑発的な内容なのかはわかりませんが、内容からの印象として「究極」というのは青臭くも感じました。あとがきにも、若いうちに俳句の本質について書いておいた方が良いと助言を受けて書いたとありましたし。そういう若々しい情熱を感じたところも面白かったです。2023/12/29
オールド・ボリシェビク
3
著者の高柳克弘、テレビのNHK俳句などで拝見するに、温和な風貌なのだが、ここに書いていることはかなり激越だ。章立てからして「言葉は信じられない」「季語を疑う」「俳句は重い文芸である」と挑発的である。それは、このまま、現状にとどまっていては俳句に将来性はない、という見切りからきているのだと思う。「文体の新しさ、素材の新しさ。なるほどこれらには限界がある。ただし、主題については限りがない。人の数だけ、詠むべきものはある」(p197)。示唆に富む一冊である。2022/05/24
peace land
3
じっくり読みましたが、俳句を作るのが、ますます難しくなってきた気分です。2022/05/06
イカクジラ
3
髙柳克弘 の『究極の俳句』中公選書 を読んだ。俳人に嫌われがちなテーマ性の擁護があり、季語の「本意」に拘泥することへの疑念があり、「伝統」偏重にむしろ反伝統をみる俳句観があり、なかなか挑発的。いや、全体的にアンチテーゼ的に見えたなら少々狭い俳句観に毒されているわけだ。そうした隘路を脱した典型として本書の主役になるのは芭蕉。俳聖の変遷を追えば「俳諧自由」が自ずと見えて来る。俳諧自由のマッサージによって俳句は新しくあることができる。逆に常識に凝ったならばそれは詩ではなくなるのだろう。2021/08/10
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