内容説明
NHKスペシャルで大反響。
ある日、筆者に一通のメールが届いた。
〈寝たきりになる前に自分の人生を閉じることを願います〉
送り主は、神経難病を患う女性だった。全身の自由を奪われ、寝たきりになる前にスイスの安楽死団体に入会し、死を遂げたいという。実際に筆者が面会すると、彼女はこう語った。
「死にたくても死ねない私にとって、安楽死はお守りのようなものです。安楽死は私に残された最後の希望の光です」
日本人が安楽死を実現するには、スイスに向かうしかない。お金も時間もかかる。ハードルはあまりに高かった。だが、彼女の強い思いは海を越え、人々を動かしていく。
〈本作を読んだ多くの方が考えただろうことを、私も考えた。もし小島ミナと同じ境遇に置かれたら、はたしてどのような選択をするだろうか、と。
著者が作中で記しているように、現にそうした状況に直面したわけでもない者の考えなど、しょせんは切迫感に欠けた想像や推測の類にすぎない。ただ、それでも考えてしまう。彼女のように安楽死を望み、それを選択するだろうか、と〉――解説:青木理
(底本 2021年7月発行作品)
※この作品は単行本版として配信されていた『安楽死を遂げた日本人』の文庫本版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さち@毎日に感謝♪
19
神経難病を患う女性が安楽死を望んでいるノンフィクション。前作の「安楽死を遂げるまで」でも思いましたが、日本でも安楽死の制度が進んで本人が希望する形で死を遂げる事が出来たらいいなと思いました。2021/09/15
paluko
9
先日読んだ『眠りの神』に、この方をモデルにしているのではないか? という部分があった。ノンフィクションとして読むとやはり重い。そして自分の受け取り方が歪んでいるのかとも思うが、55頁の医師の「それは感謝ですね。あなたは、これから、ずっと感謝し続けるんですよ。感謝することがどんどん増え続けていくんですよ」という言葉には凄い違和感を持ちました。「私の安楽死は(略)お金がかかる、時間がかかる、そして自分の死期を早めている。悪い点だらけです」(249頁)という本人の冷静な分析が印象的。2021/09/08
ジャンズ
8
多系統萎縮症に罹り、生きている間はてんこ盛りの苦痛と闘わなくてはならず、それがいつまで続くか分からない未来。日本では安楽死が認められていないのでスイスのライフサークルに依頼するが、気の遠くなるような時間と労力を必要とする。著者にメールが届いたことから安楽死に至るまでのドキュメンタリーが始まる。家族を巻き込み、煩雑な書類、渡航などと難題山積のように感じた。現在、日本において進化している緩和ケア、そして穏やかに死に向かわせる鎮静(セデーション)の選択したらどうなっていたのか?2024/09/02
ユウティ
7
ひとりの女性が安楽死を遂げるまでのルポ。著者の取材と彼女のブログなどが上手くまとまっていて、まるで一編の小説のようだった。彼女を支える家族や、他数人の安楽死希望者の迷いを含む考えなども正確に伝えてくれているんだろう。しかし全体的にはフラットとは言い難い本だったと思う。著者は安楽死には反対のようで、異なる考えを受け付けない感じがした。患者の意思よりも家族に重きをおいているが、その家族観があまりに理想的すぎるような。個人的には安楽死は選択肢としてあっても良いように思う。それこそお守り的にでも。2023/11/15
あーちょ
6
私は安易にも、安楽死に賛成している。もっと考えなくてはならないのだろうけど。治らない病に罹ったとして、苦しみながら、痛い痛いと思いながら、最後まで戦う勇気も、おそらく気力もない。小島ミナさんの最期、ルポだからこそ伝わる臨場感があった。安楽死を簡単にとらえてはならないことは十分に分かったが、その議論が進むといいなと思った。2024/07/20
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