内容説明
あなたの生き方を変える。
世界の医療現場で、安楽死合法化の気運が高まっている。超高齢社会を迎えた日本でも、昨今、容認論が聞こえてくるようになった。しかし、実態が伝えられることは少ない。
安らかに死ぬ――その柔らかな響きに、欧州在住の筆者は当初懐疑的だった。筆者は、スイスの安楽死団体でその「瞬間」に立ち会い、またはアメリカやオランダで医師や遺族と話を交わすなかで、死に対する考えを深めていく。
文庫解説で武田砂鉄氏はこう書く。
<本書から繰り返し聞こえてくる著者の吐息は、安心感なのか戸惑いなのか疲弊なのか、読者はもちろん、それは著者自身にも分からないのではないか。死にゆく様を見届けた揺らぎが、そのまま読者に届く。読んで、同じように揺らぐ。目の前に広がった死の光景をどう受け止めればいいのだろうか>――
読後、あなたは自らに問うはずだ。私はどう死にたいのか、と。
第40回講談社ノンフィクション賞受賞作にて、日本で安楽死議論を巻き起こすきっかけとなった衝撃ルポルタージュ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
GAKU
52
欧米ではかなり「安楽死」が合法化されている国もあり、スイス、オランダ、ベルギー、アメリカ等で安楽死の、様々な事例をレポートしたノンフィクション。安楽死を実施した医師だけではなく、安楽死を遂げた本人、その家族まで取材しインタビューをしている。特に安楽死直前の本人へのインタビューの数々は読んでいて、心が熱くなった。私がそれぞれの当事者の立場に立たされたとしたら、どのような判断、決意をするだろうか?あらためて「安楽死」の是非について考えさせられたが、自分は答えを見出す事は出来なかった。何とも重い読書でした。 2021/09/17
James Hayashi
27
死を考える上で良書。精神疾患から自殺する人がいるので、その点を考慮されていることは思い至らなかった。各国の安楽死のケースを扱っているが、著者自身の揺れ動く心理が作中から感じられ、自分自身の安楽死というタームを考えさせられた。また自分にとっての生死を見直すいい機会となった。2021/09/24
さち@毎日に感謝♪
16
この本を読んで安楽死を認めている国でもそれぞれ基準が違う事が分かりました。安楽死=尊厳死ではない事、最期まで自分の希望が叶えられるように日本でももっと安楽死について議論して欲しいなと思いました。2021/09/12
にしがき
10
👍👍👍👍 著者は安楽死制度のあるヨーロッパ、アメリカを訪れ、安楽死を望む本人や家族、医師、反対派と対話を重ねる。その過程を通して著者と共に読者も安楽死への考えが深まる。日本の尊厳死は延命治療を止めることを指すが、安楽死は致死量の薬剤で命を終わらせるという点が異なる。自分は一つの選択肢として安楽死があっても良いと思っていたし、今もそう思うが、著者の指摘の通り、日本ではまだ十分な議論はなされていないとも感じた。/「死」は本人だけのものなのか、少しでも長く生きて欲しいのは家族のエゴなのか…考えることは多い。2024/03/24
ヒナコ
8
フリーランスの記者による安楽死のルポルタージュ。スイス、アメリカ、オランダ、ベルキー、日本の安楽死関係者を取材し、安楽死を決行する患者やその家族の個別の背景が丁寧に取材されている。また、安楽死に関わる医師のインタビューの分量もかなり多くあり、安楽死の現場でどのようなことが起こっているのかを知る上では、参考になる資料だった。→ 2021/09/14