内容説明
果樹園の蜂の巣は、教理により厳重に管理される世界だった。その最下層の蜂として生を享けたフローラは、育児室の世話をし、花蜜を集めるうちに、女王にのみ許される神聖な母性を手にするが……実際の蜜蜂の生態をもとに、蜂の視点で描かれたディストピア文学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
82
カフカさんのワクワクするおすすめ本。偵察した情報をダンスし、他の仲間がダンスすることで情報を定着するその方法は、体を使うことで記憶を定着するので人間の勉強方法とも通じるところがより身近な物語として実感できるというように蜂社会のリアルな現実感が持ち味となっている面白い本。2022/10/24
ヘラジカ
73
本を開くまで題名はメタファーかと思い込んでいたが、なんと文字通りの”蜂の物語”である。大人の『バグズ・ライフ』と言ったら良いだろうか。寓話性と現実感のバランスから、個人的には手塚治虫の『鳥人大系』を思い出した。昆虫特有の感覚描写のなかで揺れ動く擬人化された感情表現は、とても奇妙で新鮮な読書体験をもたらす。発想の奇抜さだけではなく、フローラが階級制度から逸脱、のし上がっていく様には宮廷小説のような面白さもある。宗教や全体主義によって生み出されるディストピア、それを昆虫社会で描くのはありそうでなかったかも。2021/06/20
こなな
66
珠玉の小説ではないだろうか。この表紙もクラシックさを感じて引き込まれる。果樹園の蜂の巣の中の社会で、最下層の汚物処理係の衛生蜂として生を享けたフローラ七一七。“受け入れ、したがい、仕えよ”という言葉が何度も出てくる。逆らうことはできない。女王を崇拝し労働を生きる全てとして厳重に管理された蜂社会。フローラは女王にのみ許される聖なる母性を手にするのだ。言葉を教育されない階級のフローラなのだがフローラだけが言葉をも話せる。蜂の視点で綴られているディストピア文学。蜂の生態に則って階級ごとの蜂や虫たちが魅力的だ。2021/09/15
さつき
56
蜜蜂のフローラを主人公にした作品。蜂の生態については興味があります。明確な役割分担やヒエラルキーのある世界は、蜂を人間のような意識を持った存在として描くとなかなかエグいです。この作品を読んだ直後に蜜蜂を見かけた時は無意識で応援してしまいました。2025/07/03
mii22.
54
蜂の視点で描かれた「侍女の物語」やディストピア小説と言った予備知識や読み始めの気味の悪さなど読み終わってみれば微塵も感じさせないくらい瑞々しく、力強く、未来への希望に繋がる物語で奇妙な蜜蜂の世界にすっかり魅了された。これを読めば花から花へと花蜜を集める蜜蜂たちが愛おしくなる。過酷な労働、容赦ない粛清、厳しい管理のもと「受け入れ、したがい、仕えよ…」怪しい言葉で洗脳され秩序と階級が重んじられる蜜蜂の社会で最下層の衛生蜂として生まれながらも持ち前の勇気と賢さで力強く生き抜くフローラ717の姿に胸が熱くなった。2022/11/20
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