内容説明
人びとを救いのない業報の束縛から解放する、恩寵と救済の宗教――大乗仏教は、どのような思想的変転の中から出現したのだろうか。「さとり」と「廻向(えこう)」という大乗仏教のキーワードを軸に、その独自の論理を解明していく。
「マーヤー夫人の処女懐胎」と「マリアの受胎告知」など、ブッダとイエスをめぐる説話に驚くべき類似がいくつも見られるのはなぜだろうか。本書はまず、仏教とユダヤ教、キリスト教など、西アジアの諸宗教の影響関係を聖典文献学から探る。なかでも、ペルシアに栄えたゾロアスター教がメシア信仰や阿弥陀仏信仰、さらに大乗仏教の成立に与えた影響に着目する。
また、自分の積んだ善業の結果を「さとり」という超世間的なものに転換したり、自己の功徳を他人に振り向けたりする「転換の思想」すなわち「廻向」は、「業も果も本質的には空(くう)である」という「空の思想」に支えられている、という。そして、この阿弥陀仏信仰と「空の思想」を両輪として、大乗仏教は育まれたのである。
原始仏教と他宗教を比較する広い視野から、難解な思想を平易に説き明かす。巻末解説を、チベット学の今枝由郎氏が執筆。
『「さとり」と「廻向」――大乗仏教の成立』(講談社現代新書1983年刊、人文書院1997年刊)を改題して文庫化。
目次
はしがき
序 心の三角形
一 ブッダとイエス
二 仏伝・福音書比較研究の衰微と復権
三 西アジアとインド
四 大乗仏教の出現
五 廻向の宗教
六 「空」のさとり
[付論]仏教の終末論
参考文献
解説 大乗仏教の本質をつく広い視野 今枝由郎
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
63
新約聖書と大乗仏典の両方に、似たような物語が書かれているとき、どちらがどちらに影響したと考えるべきだろうか。単純に考えて、年代的に仏教からキリスト教、という流れと決めつけるのは誤りであり、実際に文字に書き起こされた年代を考慮するべきであるという。かくれていた東西交流だと考えるのも早急にすぎ、議論の流れはかなり慎重に進められる。後半は救済をめぐって、どこから大きな考えの転換が起こってきたかを解き明かす。釈迦が開いた仏教は、長い年月の間に予想もしなかったような展開を重ねて、現在に至っていることがわかる。2021/06/22
へくとぱすかる
41
3年半ぶり再読。121ページ4行目から節末までの3行あまりが、紀元前後のインドでの仏教の状況を的確に説明している。これを記憶しておこうと思ったら、やはりというか、しっかり巻末の解説にも引用されていた。当時の社会状況によって、教義も変化せざるを得なかったということだろう。いかに仏教の発祥がキリスト教より古くても、文献が形をなした年代を考えると、キリスト教から仏教の説話に取り入れられた流れも、無視できないようだ。もどかしいのは文献的に実証することが困難なことで、無理かもしれないが新しい史料が出現してほしい。2025/02/09
サネキ
17
仏教のキリスト教との比較の検討や、イランや西北インド、中央アジアとの宗教間の交流史から始まり、阿弥陀仏や「廻向」がどのようなものであるかを中心に大乗仏教の成立を論じている。空の思想との関連性etcまだまだ理解出来ていない部分が多いよー😭😭2025/09/14
テツ
14
仏教の起源と大乗仏教の思想の成り立ちについて。仏道の修行とは本来とてつもなく厳しいものであって、言い方は悪いが無知無学無気力な民草に対して「これをやらなくちゃ救われない」等と押しつけたってできる筈がない。それなら利己と利他に同じように重きを置き丸ごとまとめて大勢を乗せて救ってやる。自己の解脱を優先するのではなく、おまえらを先に救済してやるという考え方に至る。宗教アレルギーの方々にはなかなか信じて頂けないけれど、仏教に限らず宗教は人を救いたいのだ。そのために知恵を絞ってきたのです。2023/10/17
yamahiko
12
著者は第一義空経を引き「…眼をはじめとするすべてのものは、来たる処も去る処もなく、ただ原因と条件がそろえば生じ、原因・条件が滅すれば、滅するだけで、自己存在性を持たない、空である、…」と著述する。広範な経典の読み込みに裏付けられた明晰で簡潔な論述に、著者の研究者としての大きさを感じました。2021/07/24
-
- 電子書籍
- 感傷的な午後の珈琲 河出文庫
-
- 電子書籍
- ◎特別増大号!2テーマ◎【参院選総括】…
-
- 電子書籍
- 100%集中法
-
- 電子書籍
- -そら- 1巻 まんがタイムKRコミッ…
-
- 電子書籍
- 猫神やおよろず 〈2〉 チャンピオンR…




