内容説明
米中が衝突のコースを歩み始めた中、不確定で不愉快な外交リスクが浮上。トランプの登場は「アメリカの時代」の終わりの始まりなのか? 習近平が謳い上げた「中国の夢」「一帯一路」をどう読むか? 21世紀に入り、日中はともに相手国の把握に「失敗」してきた。私たちは中国が直面する危ういジレンマを認識した上で、そろそろ新時代にふさわしい付き合い方を構想すべきである。「習近平の中国」を知り尽くした元大使によるインテリジェンス・レポート。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
13
日中関係について国際政治学の視点から議論する。日中と言いつつトランプ外交について相当の紙幅を割いているのは、現在のファーウェイ問題などを見ても納得。中国をグローバル経済の中で全面的に孤立させることは不可能であるということ、中国が現在の国際秩序を擁護する立場を示しており、「普遍的価値」を否定しているわけではないという指摘に注目すべき。2019/05/28
nagoyan
12
優。論旨は。。。やや、散漫に流れて主意がつかみにくい。どうも多方面に気を配りすぎて、主張が弱くなっているようだ。論者は冷戦後の日中関係の失敗は、相互の位置づけを失敗したことと考えている。中国の姿勢に不安を感じつつも、中国の大国化は避け得ない現実であり、いかに中国をリベラルな国際秩序に組み込むかが重要とする。そのためには、トランプ流のやり方は逆効果で、日本が果たすべき役割は大きいとする。2019/03/15
Hatann
8
歴史を学び、世界の現状を把握したうえで、中国の現状を理解し、新時代の中国との付き合い方を考える必要がある。先の大戦における日本の失敗は、中国のナショナリズム及び米国の国際政治経済への影響力を過小評価したことにある。現在の中国は、国際的には「中国モデル」を提示して影響力を獲得する、国内的には民意の支持による共産党支配の正当性を維持することを目指す。日本は、市民社会の相対的な成熟事例をもとに国内問題処理のモデルを提示しつつ、地域的な安全保障・経済協力体制のために中国と共創すべきとする。あとがきで困難に触れる。2019/04/03
路地裏のオヤジ
5
戦前日本が中国の民族主義を軽んじて泥沼にはまる判断ミスを背景や原因を分析し、二度と同じ轍を踏んではならないと考えさせられる本であった。日本を訪れる中国人が今の日本に、格差の少ない、環境問題を重視し、社会保障や医療制度の整った自分たちの「夢」が実現できているということを感じて帰国しているということに驚いた。そうした人たちが増えて関係がもっとよくなればと思う。2019/09/07
省事
2
世界は台頭する中国を敵視しても意味はなく、日中双方が現行の国際秩序から恩恵を得ている自覚を持ち、共存共栄を目指すべきという論旨。特に日本はトランプ政権に振り回される米中関係を掣肘すべきであり、中国が暴走しないよう目を配るべきとする。エンゲージメントとコンテインメントを組み合わせた新語「コンゲージメント」を思い起こす論説。2017年の前著より平易だが、日中関係の現状を確認できる有益な一冊になっている。ただ分析ではなく、提言の問題になると東・南シナ海での中国の行動をどう押さえられるのか答えがないのが気になる。2020/05/29