内容説明
別れるときがいつか来る、と思うからよけい好ましさは身に沁みる! ――ミイちゃんこと稔に、プロポーズされた。しかし眉子は、妻子ある東野を「待つ女」から脱しきれない。そんな中、眉子は、東野と初めて「長期旅行」に出かける。「いいときにしか会わない」なんていびつな関係が変わることを望んで……。ドライで素敵な「笑い恋」は、夢にすぎないのか? 恋の本質を、鋭く優しく描く。<上下巻>
◎「恋とは闇夜のくらがりを、手さぐりでゆくようなもの」(田辺聖子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
81
恋の想いは歯車を狂わせていくように見えました。不倫が故に待つことになる眉子。それを解放すべく、東野と共に長期旅行に出かけますが、そこで「している」ことに気づくのが痛みとして刺さりました。「笑い恋」としてきづきあげてきた恋は夢だったのかもしれません。恋の本質を感じさせられました。2018/07/05
☆(´(ェ)`)☆
23
上に続き下巻も美味しい食べ物が満載でしたが、目の前の草だけ抜いたらええねんは東野だけになってきましたね。ミイ君は結婚しちゃうし、東野の大供さんの状況や家庭内の話が出たら今までのような気持ちと言うか、寛大さだけでなく、自分のずるさ(してあげた)が増えてきちゃうし。これが昭和52年に描かれたとは驚きです。2021/09/02
ぱすこ
7
何度目かの読了。田辺さんの「恋とは闇夜のくらがりを、手さぐりでゆくようなもの」をそのまま小説にしてあるのが毎回、心にしみる。昭和の、古びた表現は多々あるのに、主人公の、薄れていく愛を正面から見つめる凛々しさ、男のダメな優しさが普遍的に記されていて、決して古びない小説だと改めて思う。2016/05/15
はるる
6
愛に『の』がつくと物質化というか明確化され、幻滅する様がくっきりと見えます。 下巻の半分くらいからはそれが明らかで読んでて辛かった。男と女ではこんなに違うし、やはり孤独なものは孤独なのね。と私は心が痛みました。笑い恋は強がりでヤケクソ(本にもあったけど)さみしさがいっぱい。報われない恋はやっぱりするものではないのでしょうか(もちろん片思いは別)難しい問題ですね。2014/06/25
あしも
6
下巻は一気に読んだ。「愛はいつかは幻滅し、色あおざめる」表紙の色合いも素敵!愛情は変質するけど夫婦だから一緒にいられる。東野の「夫婦やない男女の仲ほど、面白いもんはない」よりミイちゃんの「夫婦で楽しもう」が幸せ。眉子の気持ちの変化が切なかった。2013/08/16